孤独死者の部屋に多く見られる物とは

 事件現場清掃人として、殺人や自殺など、さまざまな現場を手掛けてきた高橋さんだが、実のところ、特殊清掃の9割を占めるのが孤独死の清掃の依頼だ。そのほとんどが男性のひとり暮らしである。孤独死が起きるとその特殊清掃の費用を支払うのは、管理会社や大家、そして遺族だ。

 遺族のケースは、大抵がその支払い費用を巡って、揉めることが多い。高橋さんはその現実の凄まじさをつぶさに見てきた。孤独死した人の親族は、そのほとんどが故人に良い感情を持っていない。むしろ、故人に相当な恨みがあるのか、その怒りをぶつけられることも多い。

ご遺族だと、大体、亡くなった方の別れた奥さんがいらっしゃるんですが、ものすごく恐ろしい顔で、尋常ではない剣幕のことが多いんです。車を駐車場に停めたまま、すごく不機嫌な顔で出てこなかった娘さんもいます。奥さんから“なんでゴミにお金払わなきゃいけないんだ!”とまくし立てられたこともあります」

40代男性の孤独死の現場(写真提供/高橋大輔さん *編集部でボカシを入れています)
40代男性の孤独死の現場(写真提供/高橋大輔さん *編集部でボカシを入れています)
すべての写真を見る

 高橋さんによると、孤独死する人の家のアイテムには共通点がある。鎮痛消炎剤とマジックハンド(つかみ棒)が見つかることが多いのだ。

「貼るタイプの鎮痛消炎剤は、よく出てきますね。湿布薬で、俗にいうモーラステープです。大体、孤独死する人の家にあるのは、モーラステープと、抗がん剤とかの治療薬なんです。薬はいつも大量に出てきます。あと、マジックハンド。100円ショップとかにある、グリップを握ると、棒の先のハンドが開閉してクイッと周囲の物を取れる、アレです。

 孤独死した人は、何らかの病気を患っているケースが多い。身体が痛くて、動けないんだと思うんですよ。だから周囲の物をつかむためにマジックハンドがあるんです。中には、マジックハンドが10本くらいあったときもありましたね」

 さらにゴミ屋敷だったり、そこまでではなくとも、部屋に物が散乱していることが多い。ペットボトルや食べ散らかしたコンビニの弁当などが、山のようになっていることもよくある。病気など、物理的な理由で片づけられなくなっているケースも多いという。身体を動かすのが辛いため、物を取りやすいように、布団の周りをテレビのリモコンやペットボトルなどで固め、その中で亡くなって何日も発見されないケースもある。