棒切れを振り回す容疑者

 それからだった。容疑者の粗暴な振る舞いが、親戚の頭痛の種になり始めたのは。

 前出・親族の女性が核心を口にする。

「病名は聞いていませんが、病気になったため自衛隊を辞めたみたいです。久子さんが“孫が引きこもりで困っている”って頭を抱えていてね。“立派に育てる”と言っていた母親も手に負えなくなって、4~5年前に娘さん宅に転居してしまい、しばらく知広はひとりで隣町に住んでいました。すると、“仕事もしない男が昼間からブラブラしていて怖い”と近隣から苦情が来てね。やむなく別居中の正知さんが引き取るかたちで東市来町に連れてきたんです」

 亡夫が医師だった久子さんが所有するアパートで、容疑者はひとりで暮らし、働き始めた。

「久子さんも最初は“働くようになった”と喜んで、通勤用に自分の車をあげたんです。ただ、長くは続かんかったようでね」(前出・親族の女性)

 仕事もしないで再びブラブラする容疑者の奇行を、近隣住民は目撃していた。恐怖体験を語るのは、70代の女性だ。

「ビュン!ビュン! と音が聞こえてきてね。棒きれを振り回しているんですよ。剣道のようにちゃんとした素振りではなく、左右にビュンビュン振り回す。週に2、3回くらいかな。怖いからあんまり見ないようにしてました」

被害者の後藤さんと知広容疑者が住むアパートの前で、容疑者は棒きれを振り回していた
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 別の目撃談も。75歳女性は、

「日によって持っている棒は鉄だったり木材だったり。怖くても“こんにちは”と声をかけるようにはしていましたけど、返事は1度もありませんでした」

 平日の昼間から、仕事もせずに棒を振り回す奇怪な行動。近所の手前もある。孫の将来を思い「気さくでカクシャクとした方」(近隣主婦)という久子さんは、小言で孫を奮起させようとしたのか─。

 現地では亡くなった方の葬儀・告別式が営まれた。

「知広容疑者の伯父は“自分が行ったら自分も殺されていた”って。正知さんに“(容疑者を)病院に入れたら”と何度か話したと言っていました。亡くなった奥さんとは事件の1週間前に宮崎へ旅行に行ったばかりだったそうです。娘さんたちも泣きはらしていました」(参列した女性)

 何人かの弁護士が知広容疑者と接見しているが「弁護はいらない、弁護は結構です」と繰り返すばかり。ただ、「言葉遣いは丁寧で、やさしい人だと感じる」(13日に接見した弁護士)という。容疑者の闇の解明はこれからだ。