空き家は全国的にも社会問題となっており、非行少年や浮浪者が入り込むリスクがある。過去に島の空き家で不審火が出たこともあり、防犯対策は欠かせない。

 島民はこの先、空き家をどうしたいと考えているのか。

「空き家の見回り方法や地域の人が持ち主と連絡がとれる仕組みを作る必要がある」と話す男性がいれば、「高齢化で人もいないのに見回りの余裕はありません」と話す女性も。意見はさまざまだった。

「知名度が維持できれば」

 前出・平岡さんは祖母宅だった民家を利用してケーキ店を始めた。島外から空き家に移住した人もいるらしい。

「トイレが和式で汲み取り式だったり、道が狭く車も入れずにリフォームもできない空き家もある。わざわざ借りる人はほとんどいないんじゃないですかね」(40代の男性)

 尾道市は、空き家の新たな持ち主や借り手を見つけるためのマッチングサービスを実施している。リフォームや撤去には補助金を出す。

高見山の展望台からの景色。瀬戸内海の島々のほか天気がいいと四国まで見えることも

 連休後半の5月3日、晴天の向島。島のあちこちを走るサイクリング客、公園でボールを追いかける子どもたち、海釣りを楽しむ男性と、島はかつての姿を取り戻しつつあった。しかし平尾容疑者が潜伏していた島をひと目見ようと訪れる観光客もチラホラ。

 農業を営む木梨幸生さん(61)は「静かな島が騒がしくなってしまった。そっとしておいてほしい」と訴え、飲食店店主の女性(65)は「人の噂も七十五日。しばらくすればみんな忘れる」と苦笑い。

 尾道しまなみ商工会の担当者はひそかな期待を明かす。

「悪いことで有名になってしまったが、島には景観地やパワースポットの岩屋荒神社や映画のロケ地になった場所など見どころもある。観光客のキャンセルなど事件で受けた経済的な損失もあるが長い目で知名度が維持できれば」

 65歳の男性は、

「えらい迷惑な事件だった。刑期を終えたらまじめに働いてお金を貯め、島まで来て島民に謝ってほしいくらいだよ」

 と話した。

 いまや多くの国民が知るところとなった向島。緊迫した日々から解放され、のんびりとした時間が少しずつ流れ始めたように感じた。