まさに正鵠を得た洞察で、筆者の身の回りでも、同様の悩みを抱えるキャリア女性が山といる。

 その典型例は以下のようなものだ。

粉骨砕身、仕事優先の生活

 外資系企業で働く50代半ば。仕事一筋で、人生を歩み、役員にまで昇格した。一度結婚をしたが、忙しさによるすれ違いで、離婚し、現在は一人暮らし。人に羨まれるほどの年収を得て、まさにキャリアウーマンとして大成功を収めてきたが、最近は、忍び寄る孤独の影に得も言われぬ憂いを覚えている。

 男女雇用機会均等法が施行された1986年の直後に、日本の大手企業に入社。あの頃の社会の雰囲気は「女性も、男性に負けじとバリバリ働ける時代がやってきた」という熱気に満ちていた。粉骨砕身、仕事優先の生活。結婚退職していく同期を見て、「これで競争相手が減った」という気持ちを抱いたのを覚えている。日本でも数少ない女性役員にまで上りつめたが、将来の展望はなかなか描けない。これ以上の昇格は難しそうだが、「仕事がすべて」だったので、夢中になれる趣味などもあまりない。

 会社でのコミュニケーションは、上司と部下としての関係性のものがほとんど。気が付けば、胸襟を開いて話すということもなく、社外の人と知り合う機会もほとんどない。

 どうやって、新しい友人など作れるのか、途方に暮れてしまう。自分で意識することはないが、やはり、自分の身分、ステイタスがアイデンティティになってしまっているのかもしれない。肩書のない自己紹介などどうやってできるのか、見当がつかない。男性中心の「会社というムラ社会」の掟にどっぷりつかっているうちに、「自分もオジサン化」してしまったのではないか。

 多くの男性たちと競い合い、その熾烈な競争に勝ち抜いてきたバリキャリ女性から聞かれるのはこうした声だ。