麻紀 “持ち込んだ”っておもしろいこと言うわね(笑)。あたしが最初にヒョウ柄に出会ったのは17歳のころだったかな。青森の八戸に遊びに行ったら、たまたまヒョウ柄の生地が売っててね。一目惚れしちゃって、その生地ですぐにドレスとコートを作ったの。それからずっと、「金持ちになったら絶対、本物が欲しい」って思いながら必死で働いた。

 で、その数年後にパリに行ったら、サントノーレ通りの毛皮のお店に、本物が置いてあってさ。「これは絶対買う!」って思ったものの、持ち合わせがなくて……。当時はクレジットカードなんてなかったから、慌てて日本の友人に電話して、「金庫に300万円入ってるから、〇月〇日のエールフランスに乗る知り合いにそのお金を渡して持ってきてもらって!」って頼んだわけ。

カルーセル麻紀さんとマダム信子会長 撮影/高梨俊浩
カルーセル麻紀さんとマダム信子会長 撮影/高梨俊浩
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信子 よくそのお友達も引き受けてくれたなあ。

 私がヒョウ柄を「自分の柄!」って決めたのは、水商売を始めたころやから、40年くらい前やね。それ以来、ヒョウ柄でないと安心しないねん。去年、私の自伝『やまない雨はない』が映画化したんやけど、主演の川上麻衣子ちゃんはそれまで黒とかグレーとかしか着なかったけど、私の役をやってからヒョウ柄が好きになったって。“会長のヒョウ柄が伝染した”って言ってたわ(笑)。

麻紀 そう、ヒョウ柄ってうつるのよ(笑)。あたしはアクセサリーもヒョウの形とか大好きよ。おっきいのが好きなの。銀座のクラブで働いてたときにね、お店のママやホステスが意地悪で、小さい宝石とかしてると陰でバカにするの。そのたびに、もっともっと稼ごうって思ったわね。

信子 昔のクラブのママやホステスは意地悪だったねー。私は北新地も銀座も知っているけど、やれあの子の宝石は偽物だの、あのママの帯の締め方は格好悪いだの、そんな悪口ばかり。麻紀姉なんか性別違うし有名人やったしよけい大変やったろ? ホント強いと思うわ。

麻紀 今じゃ戸籍だって本物の“女”ですから!(笑) 

 そういえば、ゴヤールってブランドあるじゃない? あれもあたしが最初に日本に持ち込んだのよ。45年くらい前になるかな。みんながルイ・ヴィトンに群がってたころにパリでたまたま見かけて、トランクを1個買ったのが最初。「これは素敵」と思って、それから集め出したのよね。昔は布製でさ。今でこそみんなが知ってるけど、昔、泥棒に入られたときには、ゴヤールは盗まれずにそのままだったのよ。コレクションを取材に来た人が“こんなビンテージを持っているなんて!”とビックリしてたわ。

信子 そのゴヤールたち、麻紀姉が亡くなったら今度はウチに置いとくわ(笑)。