地域も力をつけないと、悲しい事件はなくならない

ーー目黒区の事件をきっかけに、児童相談所の職員が増員されます。

大浦 児相職員を増やすことは必要です。同時に人材育成が大切です。一人前になるには少なくとも3年は必要でしょう。

 同時に地域との連携も深めなければ。地域の中で児相だけが子どもを虐待から守る機関ではないのです。足立区の事件では、父親が児相と地域に見せる顔は違っていました。その家の危険性に対して、地域の最前線の職員と、都の児童相談所の職員とでは温度差がでる。事件後足立区では、児相と家庭支援センターの月ごとの協議会に、保健センターと生活保護担当部署の代表も入れて情報共有をし、地域でできることと児相がすることを徹底的に役割分担しました。

 地域も力をつけないと、悲しい事件はなくなりません。母親が、支援が必要だと行政が認める特定妊婦だった頃、支援は十分だったのか。お父さんへの就労支援があったのか。どう、地域が予防的に関わるかは重要です。

 虐待は特別なことではなくて、どの家庭でも起こり得る現象です。虐待をしているお母さんたちは、自分を支える軸が弱く、揺れ動く。そうすると子どもが不安定になります。言葉の発達が足りず、コミュニケーションスキルが低いお子さんは、すぐ怒られるので自己肯定感も低い。小さい時から養育相談を丁寧に受けることができたら、ある年齢になったときに、虐待にまで至らなくてすみます。親が困ったら地域の学校、保健センター、子ども家庭センターなど、どこにでも駆け込める仕組みがあれば、児童相談所との役割分担ができる。

 民間でも、子ども食堂や学習支援の場所が増えています。官民、さまざまな機関が、こうした子どもを理解し、手を差しのべて、必要によって児相などの専門機関に繋げていただきたい。非行の子どもや、児相に来る子どもを叱る技術は難しいです。でも、褒められると変わっていく。

 親御さんもそうです。学校もモンスターペアレントだといって、関係を閉ざしがちになるけれど、そうした親御さんにもいいところはあるものです。