右手でポップス、左手でクラッシックの“同時演奏”や、観客から募った曲題をしりとりでつなげて弾く、“しりとりリクエストメドレー”で客席から笑いや歓声が起こる。

 その観衆の視線の先にいるのは、ピアニスターHIROSHIさんだ。元来のピアニストという枠を超えた高いエンターテイメント性を持つ、異才の持ち主。「ピアノ」と「スター」を掛け合わせて「ピアニスター」と称される。ピアノ歴は今年で53年目。

「ピアノとの出会いは、4歳の頃でしたね。我々の時代は、ピアノは女の子が習うものでした。それで、近所の女の子がピアノを持っていたので、その子の家に上がって、一緒になって遊んでいたら、楽譜がなくても自然に弾けたんですよ。

 でもそれって、当時はみんなできると思っていたから、特別なことではないと感じていました。それで、母親がピアノ教室にとりあえず通わせておこうと思っていたらしくて、小学校1年生から本格的に習いだしました」 

 当時から、スポーツよりもピアノに惹かれていたという。

『編曲』ではなく『変曲』

私が子どものころ、まわりの男の子たちは野球や柔道などのスポーツを楽しんでいました。でも私は全然興味なくて、キャッチボールよりもピアノに夢中でした。

 野球のルールなんて全然わからなくて、野球の中継で“右中間にヒット!”と言っていても、“宇宙までボールが飛んだの? 凄いね!”なんて思うレベルでしたから(笑)。それほど、スポーツには無縁でした

 運動音痴だったというHIROSHIさんだが、ピアノだけは天性の感覚があった。あるとき、遊び心の延長で両手で別々の曲を弾くようになったという。

私の場合は、『編曲』じゃなくて、『変曲』というんですよ。多くの人は、ピアノに対して堅苦しいイメージがあるかと思いますが、もっと面白おかしくて楽しいものにしたい。そのためにやり始めたのですが、これもみんな出来るものだと思っていたくらいで、特別に凄いと思ったことがないんです

 ピアノ奏者の元来のイメージと違い、ポップで茶目っ気たっぷりなHIROSHIさんは、芸歴では大ベテランだが、驕(おご)ることなく、常に新人の気持ちを忘れない。

ピアノって、トランペットやバイオリンと違って、誰でも最初からきちんとした音が出せるんですよ。それに、一人で完結できる“小さなオーケストラ”みたいなもの。だからこそ、もっと多くの人に親しんでもらいたいんです」

ピアノ歴53年の指先から繰り出される演奏に記者もウットリ

 ピアノの魅力をそう語る。

 今年9月23日には、東京文化会館(大ホール)で20年目になるコンサートが待っている。

「初めてこのお話をいただいたときは、『私なんて小ホールで充分よ(笑)』と冗談で言っていたんですが、コンサートが終わったときに『来年もお願いします』と言われ、『本当ですか?』って聞き返しちゃいました。それから今年で20年目。今はこの大ホールでずっとやっていきたいという責任感に変わりました」

 同時演奏や、しりとりメドレーも目玉だが、もうひとつ注目してもらいたいものもあるという。

ド派手な衣装です。しかも、4回も替えますから(笑)

 常に観客を楽しませ、既成概念にとらわれないHIROSHIさんは、“笑わせて、最後は心がほっとするようなステージ“をこれからも目指す。

「ズバリ目指すのはピアノ界のチャップリンです」

<イベント情報>
『第20回リサイタル「UENOの森のHIROSHI」』:2018/9/23(日)開演17:00(開場16:30)場所 東京文化会館(大ホール)チケットのご予約は 047-365-9960(Ro-Onチケット)まで