写真左から斎藤暁子さん、長男たけるくん(仮名)、夫の裕医師。HSCの子どもと母親たちへのサポートを目指し、情報提供や書籍の出版などの取り組みを行う
写真左から斎藤暁子さん、長男たけるくん(仮名)、夫の裕医師。HSCの子どもと母親たちへのサポートを目指し、情報提供や書籍の出版などの取り組みを行う
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学校はとても過酷な環境

「うちの息子もですが、遊びの主導権を持っている子に対し、自分の意見を言えないんです。“場に適応しよう”と頑張り、譲るのですが、不満が残る。欲求や怒りなどを抑えているので、帰宅すると家で爆発します。親がちゃんと受け止めないと、体調不良やアトピーなどの症状として出るんです」(斎藤暁子さん)

 HSCの子にとっては、集団生活を強いられる幼稚園や学校は苦手な場所になる。前出の石井編集長は、

「学校はとても過酷な環境です。チャイムの音、先生の怒鳴り声だけで苦しくなります。“廊下を走らないで!”などと他の生徒に向けられた注意でも身体が硬直し、震えるように怖がるそうです」

 と、子どもに表出する変化を明かす。HSCの知識を持たない大人は、子どものそのような様子を見誤る。

 さらに前出・石井編集長は「HSCとの関連性はわかりませんが」と前置きをし、

「以前、自殺した中部地方の中学生がいました。理由は“同級生が先生に体罰を受けているのを見たことだった”と聞きました。もしかしたらこの子はHSCだったのかもしれません。友人に向けられる罵倒や体罰を自分のこととして受け止めたのではないでしょうか。HSCの子は他人のいじめでも自分のことのようにとらえ耐えられない気持ちになる可能性があります」

 と明かす。さらに、

「正義感が強いのも特徴です。親に、放っておきなさいって言われても、自分がされていなくても放っておけない。気になってしまうんです」

 と前出・明橋医師。その結果、ストレスが蓄積され、

「学校に行きたくない、お腹や頭が痛い、熱が出たりします。さらに喜怒哀楽がなくなる、癇癪を起こすなどの症状が出ます」(前出・明橋医師)

 対応策は「親が知ること」と前出・明橋医師。そして、

「非HSCの人からするとその気質は理解しがたいので否定しがち。しかし“お腹が痛い”“疲れた”などと子どもが訴えたら、その子が言うからそうなんだと考えることです。体調不良は子どもの身体が発するサイン、疲労感もHSCの子はそうとう神経を遣っているので疲れやすいんです」

 と全面的に子どもの気持ちを受け入れることを提唱する。

 冒頭の山下さんの息子・悟君は、「親や先生の期待に応えないといけないと頑張りすぎてしまい、体調不良などの症状が出るまで苦しんで限界」を迎えた結果、小学4年のときに学校に通うことをやめた。