「不登校になった直後は苦しくて、外に一歩も出られませんでしたが、今は中学に通っています。学校がHSCを理解してくれているので、安心できる環境になりました。息子はカメラが好きで、今ではひとりで電車に乗って出かけるようにもなりました」

 と変化を喜び、

「とにかく、あのころ、親が何も知らなかったので根性論で乗り越えられるものと考えていました。今は親がまずこの気質を知ることが大切だと思います」(前出・山下さん)

 と、しみじみ振り返る。

 前出・暁子さんは自身の経験から母親の葛藤を明かした。

「お母さんからすると、自分の子が“みんなができることができない”とか“落ちこぼれてかわいそう”とか思っちゃうんです。今、思うのは、徹底的に待っていいってことです。お箸を持つのも、自転車に乗るのも、ある日いきなりできるようになるんです。親は後ろから押しちゃダメです。できるようになったときに手伝ってください」

 と呼びかける。

 前出・斎藤医師は、

「親は“あなたの自由だよ”と伝えることが大切です。(学校なども)“友達がいるから行ってみる”“楽しかったら続ける”“合わなかったらやめていい”くらいの感覚でいいと思う。無理をさせるより好きなことを徹底してやったほうがスキルとなる。そして子どもがどんな道を選んでも親が肯定して信じて認めてあげることが大切です」

 前出・石井編集長によれば「必要なのは環境調整と正しい知識」。その2つを理解することが親の役目だ。


HSCの特徴10項目

(1)すぐに驚き、刺激に対して敏感。細かいことに気がつく

(2)過剰な刺激で圧倒されると、普段の力を発揮できなかったり、人より早く疲労を感じることがある。人の集まる場所や騒がしいところが苦手。大声や怒鳴り声、叱られているのを目にするだけでつらい

(3)目の前の状況をじっくり観察し、情報を記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため行動に時間がかかったり、新しいことや初対面の人と接することをあまり好まない。慣れた環境や状況が変わることを嫌がる傾向にある。急に予定が変わったときや突発的な出来事で混乱しやすい

(4)人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる

(5)自分と他人との間を隔てる「境界」がとても薄く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受け止めやすい

(6)直感力に優れている。場の空気や気配・雰囲気などを素早く感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜いたり、深く考える傾向にある。思慮深い。モラルや秩序を重視し、正義感が強い。不公平なことや、強要を嫌う。年齢のわりに難しい言葉を使う

(7)内面の世界に意識が向き、豊かなイマジネーションを持つ。想像性・芸術性に優れる。クリエイティブな仕事に向いている

(8)静かに遊ぶことを好む。集団よりひとりや少人数を好む。大人数の前や中では、力を発揮しにくい。自分のペースで思索・行動することを好む。観察や評価、急かされたり、競争を嫌う傾向にある

(9)自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、敏感な気質ゆえに求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまくいかない場合に自信を失いやすい

(10)自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応が出やすい。感受性が強すぎ、繊細すぎるために、学校や職場での環境や人間関係で強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい

※斎藤裕氏が研究、まとめたものを参考に編集部で作成