親御さんが入院したのだから、お見舞いを最優先事項にしたいという黒田さんの気持ちを、翠さんは当初、理解していました。

「でも、次の優先事項が、自分の出かけたいところに行くことでした。この方は、本当に結婚したくて婚活をしているのだろうかと疑問を持ちました。これって単純に私に興味がなかったということですかね。それならお断りをしていただいてよかったのに」

 お見合いをして、お相手に“交際希望”を出すのは、“もう1度お会いしたい”という意思表示のはずです。この調子でおつきあいしていたら、2人の距離が縮まることはない。おそらく結婚まではたどり着かないでしょう。

 この一度のランチの後、翠さんは黒田さんに“交際終了”を出しました。

遅刻の理由が、親の様子を見て来たから

 成美さん(35歳、仮名)は、久保田さん(40歳、仮名)と、日曜日の10時30分からのお見合いでした。ホテルのティーラウンジ入り口付近で久保田さんを待っていたのですが現れません。お相手の相談室からも、「遅刻する」という連絡が入ってきません。

 結局、久保田さんは20分近く遅刻をして、ティーラウンジにやって来ました。お見合いに遅刻は厳禁です。

 そして、遅刻してきた理由をこう言ったのです。

「遅れて申し訳ありません。今、父親が入院をしていて、その病院に立ち寄ってから来たので、遅くなってしまいました」

 私は、久保田さんにお聞きしました。「お父様は、今朝、入院されたんですか?」

「いや、2週間前です」「じゃあ、ご容体が急変された?」「いや、そんなことはないんですよ。ただ様子が気になったので」

 このお話を聞いて、私は、何か違和感を覚えました。

 お父様のご様子を見に行ったのは、本当に心やさしい親思いの方だと思います。しかしそれは、お見合いを終えてからでは、ダメだったのでしょうか? 10時30分のお見合いなら、お昼の12時前には終わります。

 午後が丸々使えるのだから、午後から病院に見舞ってもよかったのではないでしょうか? それとも、午後には別の予定が入っていたとか?

 しかし、“親が病気で様子を見に行った”というのを遅刻の理由にされますと、そこに腹を立てるのも気が引けます。ご自身が寝坊をされて、その理由にこれを使ったのだとしたら、本当に憤慨ですけれども(笑い)。いずれにせよ、遅刻の連絡はいただきたかったですよね。

 成美さんも私と同じ気持ちだったのでしょう。このお見合いは、成美さんが“お断り”をしました。