巨額な横領や不可解な株式操作など……。彼が口を開かなければ、永久に闇に葬られていたことかもしれない。

 そこでA子さんに今回の件について電話で問い合わせると、丁寧に質問に答えた。

――遺産相続でモメている?

遺書が無く、法定相続分で分配する方向で話し合っています。勇気さんが強い主張をするからモメるのかと……」

――7000万円を横領した役員のS氏は刑事告訴しないのですか?

数千万円とは聞いてますが、数字に関しては詳しくわかりません。私の中にも“コノヤロー”って気持ちはありますよ。でも現在、S氏の代理人弁護士に報告を求めているところです。報告があったのち、検討したいと思っています

――ジャスラックの同意書を『単独用』しか出さなかったのはなぜ?

単純に私のミスです。なにせこの手続きは初めてのことですし、2種類の書類があるって知らなかったんです」

――F社が所有する音楽事務所の1万7000株を買い戻すよう指示した?

「それは,'13年に行われており、平尾が元気なころに顧問税理士と決めて行っているので、私はどのような理由によるものかはわかりません」

――昨年10月25日の臨時株主総会は、招集通知もなく違法なのでは?

これまで正式に株主総会という手続きはせず、株主の話し合いで決めたことに基づき登記手続きしていますので、違法とは思っていません

 両者の主張する事実関係は同じだが、その見え方は2人ではまったく違うようだ。

父は芸能界でも先陣を切ってスクールなどを作っていましたし、後進のためにお金を使ってほしいという思いが強かったんです。

 それにチャリティーや慰問コンサートもすごくやっていた。いままで父が作り上げてきたものを僕は続けていきたいんです。悪いけれど、財産をひとり占めしようとするA子さんにそれはできないですよ」(勇気)

 遺産60億円を巡る“後妻VS息子たち”の相続争い。天国の平尾さんは、どんな決着を望んでいるのだろうか――。