生活困難者でも無料で医療が受けられる

 生活保護の一歩手前にいる人たちの中には経済的にも精神的にもギリギリの生活のため、必要な医療を受けられずにいる場合がある。全日本民主医療機関連合会によると、昨年、経済的な理由で受診が遅れたり、受診を控えて病状が悪化するなどして死亡した人のうち、生活保護を受けていない人は62人にのぼった('16年は55人、'15年は62人)。

 懸命に働いているのにもかかわらず医療を受けたらたちまち生活が困窮するおそれがある人や、失業などにより収入が絶えて医療費に充てる余裕がない人たちは病気やケガをしたらどうすればよいのだろうか。医療をあきらめなければならないのだろうか。

 そうではない。経済的に困っている人が、医療費の減免を受けられる仕組みがある。「無料低額診療」の制度だ。対象となるのは山田さん、飯島さんのような低所得者、鈴木さんのように病気やケガ、失業などで収入が減少したり、なくなったりして医療費に困っている人。また、ホームレスやDV被害者などの生計困難者だ。

 無料低額診療を利用するには社会福祉協議会、福祉事務所、無料低額診療を実施している医療機関で、現在の経済状況などをまず相談する。制度の利用が認められた場合、交付された無料(低額)診療券を持参して無料低額診療を実施する医療機関を受診すれば、低額もしくは無料で医療を受けることができる。

 援助につながる場所は住まいの近くにたくさんある。例えば、地域包括支援センターや地域の民生委員、いつも通っているクリニックなどの医療機関、薬局などだ。

 当事者にとって、とても勇気のいる一歩。だが、声をあげさえすれば、それがきっかけとなって支援に結びつく。経済的な理由で適切な医療を受けられずに命を縮めるという悲しい事態を避けることにつながるだろう。

(取材・文/高垣育)