残された夫が語る

 JR金比羅前駅から徒歩10分ほど。3人暮らしだった家に残された夫が、静かな口調で取材に応じてくれた。

「今日も妻に面会に行っとったが、何にも言いよらんかった。妻は何も言いよらん」

事件の捜査を続ける鳴門警察署
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 と絞り出す声は弱々しい。今回の事件の原因について、

「薬の飲み合わせと熱中症で、少し前に急に(次男の)病気が悪くなったんや。介護認定はしてもらえたが、等級が低かった。それが悪い方向へ働いたんや。妻も仕事をしとるし、遊んどらん(=息抜きをしない)かったからな……。悩みなんかは話しとった。一緒に世話しとったからな……。もうこれくらいで……」

 かよ子容疑者をよく知るという70代の女性は、

「自分も老いて体力がなくなるし、一緒に連れて行ったらこの子も楽になるんやないかって、自分も自殺しようとして死にきれなかったんやと思うよ。納屋にいたっていうんやから、きっとそうやないかな。

 うちの子もリウマチで長く苦しんだからな、子どもを思う母親の気持ちはようわかる。きっと苦しかったんやと思うよ。本当に息子さんを大事にしとったもの」

 脳梗塞を患った高齢の夫と老いた自分、パーキンソン病で苦しむ次男、先には希望が見えない闇しか映らなかったのか。

 将来への不安を聞いたという近隣の70代女性は、

「自分も年だから、もっと悪くなったら面倒を見るのにも限界があるし、仮に夫婦とも死んでしまったら長男が面倒を見ることになるやろうけど、負担になるやろうからな。すごく悩んでいたと思うよ。修志さんだけでなく、ご長男のことも心配していた」

 かよ子容疑者が抱えていた八方塞がりの状態を憂う。

 かつて、大好きなオートバイに乗って自由に走り回っていた息子の姿を思い出すのは、さぞかしつらかっただろう。

 自分が産み育てた息子に、母親が手をかける……。老いた母親を跳ね返す力が、息子にはもう残されていなかった。