「長さゆえの慢心はないか」

 先月24日に始まった臨時国会の所信表明演説で、そう自問した安倍首相。「1強に陰り」「求心力低下」と言われながらも、第二次安倍政権が発足してから6年10か月が経過。さらに、2021年までの「戦後最長政権」が視野に入る。

 長さゆえに忘れられがちな公約、さまざまなスローガン、鳴り物入りで始まった政策って結局、どうなった? まずは景気や経済について、あの人と見ていこう。

「トクしたのは大企業と富裕層316万人だけ」

 2012年末に自民党が政権与党に返り咲いて以来、鳴り物入りで進められてきたアベノミクス。あれから6年、私たちの暮らしはどう変わってきたのだろうか? 

 民主党政権時と現在を比べると、平均給与が上がり、株価も円相場も持ち直して、経済が上向いているかのように見える。実際、景気を数値で表す景気動向指数はバブル期を超え、その長さは、来年1月まで続けば戦後最長を更新するという。

 経済アナリストの森永卓郎さんが解説する。

「財政・金融政策については、安倍政権は、ほぼ正しいことをやったんです。金融緩和で市場に出回るお金の量を増やした結果、経済の指標が劇的によくなりました」

 第2次安倍政権の発足前、日本経済はボロボロだった。

「日経平均株価が8600円ぐらい。いまの2・5分の1ぐらいでしたが、回復しました。労働市場もひどい状況だったのが、有効求人倍率は倍ぐらいにまで上がり、いまや人手不足の状況に。為替レートも、民主党政権の末期には79円だったのが、110円台まで戻っています」

 一方、物価はじわじわと上がり、家計に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」も上昇。平均給与も上がってはいるものの、その伸びは物価の上昇に追い付いていない。

「国内総生産(GDP)という経済のパイは7%も大きくなりましたが、実質賃金は4%ほど下がった。パイが大きくなったのに、分け前はむしろ減っている。なぜか? ごく一部に、お金が滞留したからです」