─『スリル・ミー』で共演することが決まったときは、お互いどう思いましたか?

福士 僕は単純にうれしかったですね。なんか根拠のない自信というか、どでかいピースがハマる気がするって思ったのは、勘違いだったかどうかはわかりませんけど(笑)。

成河 それはこれからだよ。

福士 成河くんと演出が栗山(民也)さんでやると聞いたときに、いいパッションが自分のなかで生まれました。

成河 僕もミュージカルってものに足を突っ込んで月日が浅いこともあるし、ぐちゃぐちゃ演劇をめぐる環境について考えちゃう癖があるんですけど、そんなものぜんぜん関係ないところから、誠治くんがバ~ッと来て作品の話をできたことがすごくうれしくて。

福士 芝居に関しての追求は似ているような気がする。土臭いというか、生け花じゃねえぞ俺たちみたいな。大地に咲く花でいたいみたいな。

成河 だって泥臭いものをやるほうが絶対楽しいしね。特にこの作品は、どろっどろした汚いものであるべきだと思うから。こんな無残な姿をさらすミュージカルを、今回、誠治くんとできると思うとすごくうれしいんですよ。

─『スリル・ミー』という作品についてはどういう印象ですか?

福士 いいタイトルつけるなと思いました。

成河 ほんとにそうだね。

福士 スリルっていうのがすごくいい響きで、作品にマッチしている。このタイトルでなきゃこんなにヒットしなかったのではないかという気がするくらい。

成河 変な邦題つけなくてよかったよね(笑)。

福士 この作品の中身は、暗いというか深いというか、そのとらえ方はたくさんあるんですけど、そういう意味でこのスリルっていう漠然とみんなが持っている共通の言葉がイマジネーションを生むのがいいなって思いました。

成河 劇場にスリルを求めて来る観客の叫びでもあるだろうし。誰が言ってる言葉かっていうことが、またこの作品の核にもなってきますし。僕は非常に女性客向けのものなのかなっていう勝手な偏見を持っていたんですね。でも実際はぜんぜんそんなものではなくて、すごく暴力的な作品だったのでギョッとしました。だから偏見を持っていたことを恥じましたし、同じように考えている方にも見てもらえたらと思っています。