『水どう』を生みだした局だからこその演出

 原作者の佐々木倫子先生といえば、『チャンネルはそのまま!』以外にも『動物のお医者さん』や『おたんこナース』など、数多くの名作漫画を世に送り出していることで有名です。かくいう私自身、小学生のときに『動物のお医者さん』を読んで以来、ずっと佐々木先生の漫画を愛読している、いちファンでもあります。

 そんな原作ファンが今回の実写化を見て思わずニヤリとしてしまったのは、まず主人公・雪丸花子を演じる芳根京子さんの理想的な“憎めなさ”。

 佐々木先生の漫画はどの作品においても、登場人物がいずれも「憎めない市井の人」という共通点を持っています。再現するにはかなり難しくもあるそのニュアンスを、先日、日本アカデミー賞の新人俳優賞も受賞した主役の芳根京子さんは、これまた見事に表現しきっています。

 またもうひとつ特筆すべきことは、佐々木先生の作品の特徴でもある“描き文字”を、HTBはテレビでおなじみ“テロップ”を用いて、見事なまでにそのまま活かしているという点。

 思えばHTBの人気番組『水曜どうでしょう』でも、数々の名言はこの描き文字に似た“手書き系テロップ”から生み出されていきました。「ここをキャンプ地とする」「腹を割って話そう」「ギアいじったっけ ロー入っちゃってもうウィリーさ」……。

 HTBは、この手の“文字出し”が、おそらくローカル局でトップクラスではないでしょうか。その手腕は、今回の漫画実写化においてもまさかの形で、いかんなく発揮されています。

「ローカル局の存在意義」

 今回のドラマにおいて、実際に地方に住んでいる私がとても印象的に感じたセリフがあります。それは第1話で、就職活動中の雪丸花子がHHTVの面接試験に臨んだシーンでのことでした。

 雪丸は「HHTVに入社したら何をやりたいですか」と面接官に聞かれ、元気よく「ドラマがやりたいです!」と答えます。しかしそれを聞いた面接官は一笑に付し、こう返します。「あぁ、初歩的な間違いだ。HHTVではドラマは作ってない。残念だったね」

 このセリフが興味深いのはこの『チャンネルはそのまま!』の実写化も、それこそHTB制作スタッフの「1度も連続ドラマを作った経験がない」というところから、すべてが始まっているという事実です。