普段テレビを見ていると、そして特に首都圏のテレビ番組を見慣れていると忘れがちですが、在京キー局と地方ローカル局は同じテレビ局ながら、大きな違いがあります。

 例えば劇中で雪丸も見落としていたように、地方ローカル局ではドラマを作らないし、もっといえば地方ローカル局の放送番組も、その大半は自社ではなく在京キー局が手がけたものになっている。

 しかし、それでは地方ローカル局の役目は単なる橋渡しに徹することなのかといえば、決してそうではないと私は思います。

 実際、昨年の大きな災害(胆振東部地震)のときに、いち視聴者としてそう感じました。全域ブラックアウトによる長い停電が続く中、避難中の私たちの命に直結していたのは、在京キー局の繁華街停電レポートではなく、地方ローカル局が独自に調べて流してくれる携帯電話の充電拠点、またガソリンスタンドやスーパーなどの詳しい営業情報でした。

 そんなふうに地方ローカル局は災害時、また平時の日常においても、東京から遠く離れた場所に暮らす視聴者それぞれの暮らしと、密接に関係しています。そしてローカルテレビマンは「地域のためにいま何を伝えるべきか」を、限られた素材と決して恵まれているわけじゃない予算の中で己に問い続け、今日もこつこつと形にし続けているのです。

 いまだ東京一極集中の流れが止まらぬ中、東京から離れた場所にいることを選んだ者たちは、はたして何を創るべく生きているのか。そして笑いの中にさりげなく描かれているからこそ、グッと胸に残る「地方ローカル局の存在意義」というメッセージ。

 地方が移住や創生という願望を込めた言葉で語られるようになった今だからこそ、このドラマを見て「つまり地方で生きるとは何ぞや」ということを、多くの人に考えてみてほしいと、体感をもって、私はそう思いました。

 ちなみにこの『チャンネルはそのまま!』は、先日からNetflixで配信がスタートしているだけでなく、秋田、岩手、長野、愛知、岐阜、三重、長崎、埼玉、山梨、宮崎(3月15日現在)といった、各地のローカル局でも放送が決定しています。

 もしお住まいの地域でこのドラマが放送されていたら、その際はぜひ、“チャンネルはそのまま”にしておくことを、こちら北海道から本気でおすすめします!


乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身、15歳から北海道に移住。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版している他、雑誌『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』などでも執筆。Twitter/ @drifter_2181