この記事が出た3日後には、ハードにとって初めてのメジャースタジオ大作『アクアマン』が北米公開されている。映画は、全世界で10億ドルを超える成績を挙げ、ハードはついにキャリアで初めてヒット作への出演を果たすことになった。

 だが、それとハードの意見記事は、何の関係もない。『アクアマン』の主役はジェイソン・モモアだし、観客は面白そうなスーパーヒーロー映画を観に行っただけだ。そもそも、この記事自体が世間的にはほとんど話題になっておらず、ハードをサポートする目的でこの映画を観に行った人がいるとは到底考えられない。

 それでも、このタイミングは偶然でないと、デップは見た。3年前に離婚申請するにあたっても、彼女はわざとデップの出演作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(2016年)のプレミアにぶつけるという嫌がらせをしているのである。

 そこへきて、先月、彼女は、国連人権高等弁務官事務所からヒューマンライツ・チャンピオンに選ばれた。“権利のために闘う女性”という彼女のイメージ戦略がうまくいったということだろう。

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5000万ドルを元妻に要求

 ならば自分も自分の権利のために闘ってやると、デップは思ったのかもしれない。ただでさえ経済的に火の車状態にあり、この2年ほどはほかにも訴訟したりされたりで大変だったにもかかわらず、彼は彼女に対し5000万ドル(約56億円)を要求する名誉毀損裁判を起こすと決める。そして、その訴状で、彼はこれまで言いたかったであろうことをぶちまけた。

 30ページに及ぶ訴状は、最初から最後までDVを行っていたのはデップではなくハードだと、繰り返し強調している。ハードが写真で見せた顔のあざも、そこに至るまでの経緯も、すべてウソであり、作りごとだと、訴状は述べる。

 当時、ハードは、L.A.ダウンタウンにあるコンドミニアムで行った自分の誕生日パーティーにデップはひどく遅れ、酔っ払った状態で現れて、ハードに携帯を投げつけたり、ワインボトルを振り回して家の中をめちゃくちゃにしたりしたと語っていた。

 しかし、そのとき通報を受けて現場にやってきた警察は、ハードにケガはなく、家の中もまるで乱れていなかったと述べている。また、コンドミニアムの従業員も、その後数日にわたって彼女を見たが、顔にあざはなかったと、当時から証言していた。

 この訴状では、これらの人々の話が、実名、肩書、経歴なども含め、非常に詳しくつづられている。

 例えば、彼女がデップに携帯を投げつけられたとされる2016年5月21日から、彼女があざのある顔を世間にさらした27日までの間、何度も間近に彼女を見たというコンドミニアムの従業員は、ニュースで初めてハードのDV告発を知ったときには驚いたと語っている。