おかしいことはおかしいと言いたい。だから後呂さんら契約社員4人は'14年5月、メトロコマースを訴えた。

 今年2月20日、東京高裁で開かれた控訴審判決は、ほぼ全面敗訴だった地裁判決に対し、退職金の一部に加えて住宅手当、褒賞が認められた。労働契約法20条を根拠とする裁判で、非正規労働者に退職金が認められたのは初めてのことだ。一方、基本給や賞与については請求を棄却した。

 新聞には一歩前進の見出しが躍ったが、後呂さんは「あたりまえのことがあたりまえに認められるのに、5年もかかった」と憤り、さらにこう続けた。

「基本給と賞与こそ格差が最も大きいのに、認められませんでした。その理由を裁判所は、正社員は企業にとって有為な人材だから、としています。

 これは契約社員を劣った仕事のできない人間として、差別しているのと同じ。正社員と同じ仕事をしているんだから、100%もらうのが当たり前。1円でも差別は差別です。尊厳をかけて、格差是正ではなく、私たちは差別解消を求めているのです

アリが大企業に挑む非正規の闘い

提訴にあたり、体調不良をおして記者会見に臨んだ田島さん

「相手は大企業、相手にしてみれば私はアリのようなもので、いつでもつぶせるでしょう。それでも、理不尽な差別は許せない。同じ人間が使い捨てられていいはずがない」

 3月19日、カー用品販売『オートバックス』加平インター店の元アルバイト販売員・田島才史さん(52)は、記者会見で、非正規差別是正裁判に臨む思いをこう語った。非正規雇用への不合理な差別を禁じた労働契約法20条に違反するとして、オートバックスの加盟企業・ファナスを相手に、東京地裁に提訴したのだ。

 '06年以来、1年契約の更新を13回繰り返してきた。時給1300円。土日だけ10円、時給が上がる。昇給もなく、諸手当もつかなかった。

「メイン業務は接客です。カーオーディオの販売などを担当していました。物を売ることに、正社員もアルバイトも関係ない。39歳で始めた接客業でしたが、車が好きだったこともあり売り上げは良かったんです」

表彰状が会社への貢献を物語る

 田島さんは正社員も合わせた個人成績で、月間トップの売り上げを何度も叩き出した。表彰されたことも数知れない。新製品などの研修にあたり、この人なら売ってくれるから、とメーカーから個人指名を受けるほどだった。

 しかし、それが昇給や報酬に結びつくことは一切なかった。

「結果を出したから、今度こそ、と昇給の話をしても、会社はのらりくらりとかわすばかりでした」