そして、洋子さんが65歳で自分の年金を受給し始めると、その分だけ遺族年金から差し引き、遺族年金(月7万円)+国民年金(月6万円)となる。洋子さんが80歳までに受け取る遺族年金は合計で1700万円。

 宮迫家の財産(5000万円)、夫個人の貯金(800万円)、自宅(2800万円が相場)は妻と息子が折半で相続。そして退職金(2500万円)の第一受取人は「戸籍上の妻」なので洋子さんが2500万円をすべて受け取ることができる。

 死別の場合、洋子さんが受け取る金額は9000万円を超えるのだ。

 このように離婚より死別のほうが4500万円も有利。「主人に早く死んでほしいというわけじゃないんです。でも、なかなか気持ちの整理もつかないし」

 と洋子さんは語るが、もちろん不利な条件で無理に離婚する必要はない。さらに35年も連れ添った相手と離婚するか否かの決断をするのは簡単ではない。洋子さんはとりあえず、何も答えず様子見を続けることにしたそうだ。

 熟年離婚(同居35年以上)は40年で20倍に膨れ上がっているが(昭和50年は300組、平成27年は6266組。厚生労働省調べ)、これは氷山の一角。

 なぜなら、男性の平均寿命は女性より短く(男性は80歳、女性は87歳)、洋子さんのように離婚より死別のほうが金銭的に有利なら離婚に応じずに夫が先立つまで待つケースはここに含まれないからだ。


執筆/露木幸彦 離婚サポーター、行政書士、ファイナンシャルプランナー。1980年生まれ。離婚に特化した行政書士事務所を開業。著書に『イマドキの不倫事情と離婚』『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で!!!!!』など多数