かといって宇垣は悪女ではない

 ネットでは「性格に難がある」と書かれたりしていますが、宇垣はファーストフォトエッセイ『風をたべる』(集英社)に「稀代の悪女になってやろうじゃないですか」と書いていたくらいですから、そんな指摘は痛くもかゆくもないでしょう。幸い、芸能界には長いこと、悪女キャラが不在ですから、1度そのポジションに収まってしまえばおいしいと思います。

 しかし、宇垣が悪女になれるかというと、ちょっと足りない気がするのです。

 悪女とは何かを定義すると、やっていることはむちゃくちゃで、人の神経を逆なですることもあるけれど、気にせずにわが道を行く強い女性のことを指すと思います。

 周囲は迷惑をかけられながらも、そんな彼女を嫌いになれないわけですが、宇垣は悪女になれるほど、強くないと思うのです。上司からもらったコーヒーを捨てたり、台本をポイ捨てしたり、気が強いじゃないかと思う方もいるでしょう。しかし、これは自分から仕掛けたわけでなく、上に何か言われたときの“反応”であることがポイントだと思うのです。

「イタチの最後っ屁(ぺ)」という慣用句をご存じでしょうか? イタチは外敵に遭ったりしてピンチに陥ると、悪臭を放って敵をひるませることから、この言葉は「最後の手段」という意味で使われています。

 宇垣の行動も、イタチの悪臭と同じで「相手を威嚇するための、最終の手段としての強がり」ではないかと思うのです。“あなたなんて怖くない”ということをアピールするために、コーヒーを上司の目の前で捨てたり、台本をポイ捨てするような行動をとるのではないでしょうか。