「気が小さい」か「精神面が未成熟」な可能性

 宇垣といえば、『クイック・ジャパン』(太田出版)に連載中のコラムで記した「マイメロ理論」が有名です。理不尽な出来事に遭遇したとき、宇垣は「私はマイメロだよ~☆ 難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」とサンリオのキャラクター・マイメロディになりきって、自分の心身を守ると説明、さらに『風をたべる』では、「この人、マイメロになんか怒っているんですけどwww 暇かよwww」といった具合に、怒る人の1段上に立って、笑ったり哀れんだりしていることを明かしています。

 これもまた私には、自分を守るための「強がり」に思えるのです。自分に非があると指摘されるのが怖い、傷つきたくないと思うからこそ、マイメロという別人格に逃避することで、相手の話をいっさい耳に入れないようにしているのではないでしょうか。

 同番組に出演した宇垣の親友は、彼女のことを「あなたは正しいと言われたい子」と評していましたが、そういう人にとって、降板宣告や注意は「あなたは間違っている」と言われたのと同じに感じられるのではないでしょうか。「攻撃は最大の防御」と言いますが、一連の行動は宇垣が自分を守るための過剰防衛に私には見えます。

「やられたら、やり返す」という宇垣のような人は悪女というより、「気が小さい人」もしくは「精神面が未成熟な人」ではないでしょうか。

 宇垣の上司からのコーヒー拒否行動は、常識的に考えたら、そしられても仕方ないことでしょう。それに対し、悪女が取る行動というのは、もっとしれっとしたもの、つまり傍目からみると、攻撃しているように見えないのに、相手に確実にダメージを与えられるすごさがあるのでははいでしょうか。

田中みな実の悪女っぷり

 例えば、宇垣の先輩にあたる田中みな実は局アナ3年目のころ、『さんまのホントの恋のかま騒ぎ』(TBS系)に出演しています。

 さんまと田中が掛け合いをしていたとき、マツコ・デラックスがマイクを押さえて、田中のことを「本当に嫌いなのよ」と隣に座るミッツ・マングローブにささやいたことを、双子おネエタレントの広海が暴露。田中は「マツコさんに嫌われちゃった」「マツコさんに嫌われるようなことをしてしまって、申し訳ありませんでした」と泣き始めて、マツコを悪者に仕立てあげます。しかし、涙を見せたのはごく一瞬で、実は笑っていたのでした。

 弱いフリをして相手を窮地に追い込むことができるのは、田中が本当は強い証拠だと思うのです。

 宇垣が本当に強気な性格なのか、私の想像するように、気の小ささを隠すために過剰防衛しているのかはわかりません。しかし、ズケズケものを言う美人や、強がっているけれど本当は弱い美人といった、ちょっと波風を立てる“メンタル不安定系”を支持する層は男女問わずいるでしょう。周囲を適度にハラハラさせ続けることができれば、宇垣はタレントとして大成できるのではないでしょうか。


プロフィール

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。