いよいよ8月。夏休みは映画業界にとってのかき入れ時であり、各配給会社はヒットが見込める大作映画を送り込む。そして、子ども客が増えるこの時期は、アニメーション映画が多く公開される傾向にある。

 しかし、今年の夏のアニメーション映画には“意外な共通点”があった。ピクサー映画の人気シリーズの第4弾となる『トイ・ストーリー4』、劇場版ポケットモンスターシリーズで初の3DCG作品となる『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』、そして名作ディズニー映画を実写化した『アラジン』。これらはいずれも’90年代にヒットし、多くの観客の記憶に残る名作のリメイク、もしくはシリーズ作品だ。そしてもう1作品、今夏のアニメ映画を語るのに忘れてはならない作品がある。『君の名は。』の新海誠監督のオリジナル新作アニメ映画『天気の子』だ。

 ※本記事は各作品の結末に触れる部分がありますので、ご注意ください。

 

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おもちゃを超えた新しい生き方
『トイ・ストーリー4』

映画『トイ・ストーリー4』大ヒット公開中!
(C)2019Disney/Pixar.AllRightsReserved.
映画『トイ・ストーリー4』大ヒット公開中!
(C)2019Disney/Pixar.AllRightsReserved.

『トイ・ストーリー4』は、’95年にディズニー/ピクサーが生み出した初の長編映画『トイ・ストーリー』のシリーズ最新作だ。『トイ・ストーリー』は世界初のフルCGアニメーションでもあり、映画史の中でもエポック・メイキングな作品ともいえる。全世界では3億7300万ドル以上の興行収入をあげている。

 おもちゃの世界を舞台に描くこのシリーズでは、カウボーイ人形のウッディ、スペース・レンジャーのバズ・ライトイヤーを中心に、おもちゃとしてのアイデンティティや持ち主の子どもとの交流などを描いてきた。’95年の『トイ・ストーリー』では持ち主の愛をめぐるおもちゃ同士のライバル心を、’99年の『トイ・ストーリー2』ではおもちゃ同士の友情を、’10年の『トイ・ストーリー3』では大学生へと成長した持ち主・アンディとの別れおもちゃとしての生きざまが描かれている。

 そして、現在公開中の最新作『トイ・ストーリー4』。公開後の週末2日間で103万1000人を動員し、13億7700万円の興行収入を稼ぎ出した。しかし、この最新作の結末は、SNSなどで大きな論議を呼んでいる。子どもとともに生きるために生み出された“おもちゃ”が、子どもに必要とされなくなったときにどう生きるか……。

 ピクサーはスタジオにとっても記念すべきこのシリーズの最新作に「誰もが属性にとらわれず、好きなように生きていい」というメッセージを込めた。おもちゃだからって、おもちゃらしく生きなくてもよいのだ。変化を恐れず、自分の内なる声を受け入れた主人公・ウッディの選択は、シリーズ自体のテーマも大きく変化し、成長していることを感じさせる。