自分とは何者か
『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』

映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』
(C)Nintendo・Creatures・GAMEFREAK・TVTokyo・ShoPro・JRKikaku
(C)Pokémon(C)2019ピカチュウプロジェクト
映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』
(C)Nintendo・Creatures・GAMEFREAK・TVTokyo・ShoPro・JRKikaku
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 次に、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』について述べたい。この作品は’98年に製作されたシリーズの第1弾作品『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』をフル3DCGアニメーションでリメイクしたものだ。

 ’98年の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は日本で72.6億円の興行収入をあげ、全米での日本映画興行収入歴代1位という記録はいまだ塗り替えられていない。この作品のヒットを受け、“劇場版ポケットモンスターシリーズ”は日本の夏休みアニメ映画の定番のひとつとなった。

 今夏公開された『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』では、ストーリーラインはほぼそのままに、ポケモンの世界観が3DCGアニメーションで再現されている。

 ポケモントレーナーのサトシとパートナーポケモンのピカチュウを主人公とするこのシリーズだが、本作の物語を展開させるのは、いわゆる“敵”のポケモンであるミュウツーだ。

 ミュウツーは幻のポケモン・ミュウの化石の一部を利用して人間が作り出した伝説のポケモンで、徐々に「自分は何者か」という問いを抱くようになる。そうやって自らの存在について悩んだミュウツーは、「コピーポケモン」を作り出し、人間に逆襲を仕掛けていく。

 ミュウツーが抱くアイデンティティについての問いかけは、多くの若者が抱くものでもあるだろう。そして、ミュウツーは自らで答えを得ていくのだ。

 ’96年にゲームボーイソフトとして登場した『ポケットモンスター赤・緑』(任天堂)は、’97年のテレビアニメ化から、’98年には映画化、さらにピカチュウらのキャラクターを利用したメディアミックス展開が行われ、今や世界的に有名な人気コンテンツとなっている。’16年にはスマートフォン用ゲームアプリ『Pokemon GO』が登場し、子どもだけではなく、ポケモンを卒業した世代や、ゲーム体験をしてこなかった世代にまでその魅力が伝わることとなった。

『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』はこの世界的人気コンテンツ「ポケモン」の劇場版の原点に立ち返り、最新の技術で変化させたものといえる。今年の5月に公開されたハリウッド製作の実写映画『名探偵ピカチュウ』とともに、時代に即した変化を遂げた意欲作であるといえるだろう。

強い意志を持った王女・ジャスミンに恋をする
『アラジン』

映画『アラジン』大ヒット上映中!
(C)2019DisneyEnterprises,Inc.AllRightsReserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 
映画『アラジン』大ヒット上映中!
(C)2019DisneyEnterprises,Inc.AllRightsReserved. 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 

 実写化された本作は、ウィル・スミスが青い肌の魔神・ジーニーを演じることでも話題となった。そして、この実写版には、アニメ版から大きく変化したキャラクターがいる。それはアラジンが恋する王女・ジャスミン

 実写版のジャスミンは“王のただ一人の嫡子(ちゃくし)”として自らが王になることを望み、そのために勉強を重ねている女性だ。「女だから」というだけの理由で男の言いなりに生きなければならないことに反発し、「自分らしく生きたい」と人生を切り開こうとしている。

 実写版のジャスミンは、アニメ版には登場しなかった楽曲『スピーチレス~心の声』という曲を一人で歌う。これまでジャスミンが密かに心に抱いてきた、「自分がどうありたいのか」「どう生きていきたいのか」という心の声を朗々と歌い上げるのだ。

 アラン・メンケンが作曲し、映画『ラ・ラ・ランド』のベンジ・パセク、ジャスティン・ポールが作詞したこの曲は、’19年というこの時代のヒロインにふさわしい曲と言えるだろう。この作品もまた、時代に即した形で変化し、「自分らしく生きる道」を選ぶ登場人物を描いているのだ。