施しに似たヤバい愛

 おさむ氏は結婚当初から、妻をブスと呼んでいますが、それではブスでない人、つまり美人に優しいのかというと、それもまた疑問なのです。『新R25』によると、おさむ氏は独身時代、恋人を顔とエロさで選んでいたそうです。しかし、「セックスがどれだけうまくても飽きるし、美人な子にも上には上がいる」と気づいた。

 この選び方、キャバクラや風俗など、金銭を払ってサービスを受けるときの発想ではないでしょうか? 美人にはプライドや性欲を満たしてもらい、美が必要でない職業の女性が成功し、自分の妻となっても「ブス」と呼ぶ。結局、女性を軽んじているようなヤバさを持っているように思えてならないのです。

 すべての結婚は賭けであり、鈴木夫妻が現在うまくいっているのですから、他人が口を挟む筋合いはありません。しかし、おさむ氏の言動からは「愛してやっている」という施しに似たヤバい愛を感じるのは、私だけでしょうか。

 ブスといえば、昨年、日本テレビが、相席スタート・山崎ケイのエッセイ『ちょうどいいブスのススメ』を原作にしたドラマを放送すると発表したところ、SNS上で炎上。放送前にドラマのタイトルを変更するという前代未聞のアクシデントがありました。

 ブスという言葉にあれだけの人が怒るということは、ブスを幸せにすれば、そのぶん、人気が出ちゃうんじゃないの? それなら『ブスの瞳に恋してる』のように、ブスが高収入の男性と結婚する“いい話”をドラマ化すればウケるんじゃないか。万が一でも、おさむ氏や制作側がそんなふうに思っているとしたら、時代についていけていなくてヤバい。

 今の時代、世間は「一方的に人をジャッジし(でも、自分がジャッジされることは好まないし、許さない)、嘲笑(ちょうしょう)する権利は誰にもない」という話をしているのに、おさむ氏や制作サイドは“ブス”として貶(おとし)め、けれど「愛してあげる」ことで、“いい話”にすり替える。この溝は深く、なかなか埋まりそうにない気がします。


プロフィール

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。