周囲に助けてもらってきた

 とはいえ新しい歌舞伎も、テレビドラマへの挑戦も、隼人さんにとっては大事な道。

「今年はNHKの時代劇ドラマ『大富豪同心』に、ダメな同心の卯之吉役で主演させていただきましたが、初めてのことばかりで苦労もありました。歌舞伎なら慣れた土俵でおなじみのメンバーですから、僕がやることもだいたい酌んでいただけます。

 しかし映像では完全にみんな一個人。真剣に悩みました。でも結果的には周りの俳優さん、みなさんに助けていただいたんです。よかったなと思うことは、普通の時代劇なら主演がバッタバッタ斬って、事件を解決していきますが、今回は周囲の人が卯之吉を助けてくれるという設定で(笑)。

 それが楽屋でも反映されていたおかげで、みなさん可愛がって、いろいろ教えてくださいました。僕の中ではあの経験は、一生の宝物ですね

 俳優には「経験が何より大事」だという隼人さん。『新版 オグリ』の経験で、どんなステップアップを見せてくれるか楽しみだ。

「今回は僕がいま、オグリと同じ25歳でやらせていただくことに意味があると思うんです。若い人には思わずうなずくくらい共感していただきたいし、もっと年上の方々にも“あんなころがあったな、いまもああいう気持ちはわかるな”と思っていただけたらうれしいです」

(取材・文/若林ゆり)


《PROFILE》
なかむら・はやと 1993年11月30日、東京都出身。歌舞伎俳優、二代目中村錦之助の長男。2002年に歌舞伎座『寺子屋』で初舞台を踏み、初代・中村隼人を名乗る。屋号は萬屋。
 若手俳優が古典の大役に挑む『新春浅草歌舞伎』をはじめスーパー歌舞伎II『ワンピース』のサンジ、イナズマ役、新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』のうちはサスケ役などで人気急上昇。テレビではTBS『せいせいするほど、愛してる』などのドラマやLaLa TV『メンズキッチン』のMCにも挑戦。今年はNHK-BSの土曜時代ドラマ『大富豪同心』の卯之吉役で主演を果たし、10月からはNHK総合での放送が決定している。 

スーパー歌舞伎II〈セカンド〉『新版 オグリ』

スーパー歌舞伎II〈セカンド〉『新版オグリ』 (c)松竹
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 梅原猛の原作をベースに、市川猿翁が創りだしたスーパー歌舞伎の代表作『オグリ』。この作品を、当代の市川猿之助がスーパー歌舞伎II〈セカンド〉としてブラッシュアップ。横内謙介の脚本、猿之助と杉原邦生の演出、スーパーバイザー猿翁のもと『新版 オグリ』として世に送る。市川猿之助と中村隼人は小栗判官を交互に主演。
 オグリを演じない回にはキーパーソン・遊行上人としてオグリと同時宙乗りを務める。ラストには感動と歓喜の渦が巻き起こる、エンターテイメント性あふれる超大作活劇。10月6日~11月25日 新橋演舞場で上演。問い合わせ:チケットWeb松竹 TEL:0570-000-489。詳しい情報は公式HP(https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/622)へ。