出会いの奇跡を描き出す名手

10月からドラマ化の『G線上のあなたと私』は大人のバイオリン教室が舞台/右・『a』は、原作小説が実写映画化!
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『G線上のあなたと私』はバイオリン教室が舞台。アラサー女子に主婦に大学生男子と、生活環境が違う人々が出会い、自然に関係を深めていくさまは微笑ましくもうらやましい。

「自分も大人のバイオリン教室に通っているので、そこからできた話です。ロマンスなどはまったくありませんが」

 平凡に見える人にも個々の物語があり、誰かの人生と交錯したときに何かが生まれる。いくえみさんは、そうした小さな瞬間をすくいあげる名手。著作がメディア化されることの多い一方で、最近は作家・伊坂幸太郎の小説『アイネクライネナハトムジーク』のコミカライズも手がけた。ここでもいくえみ節は健在、その妙味を堪能できる。

伊坂さんからご指名をいただき、とてもうれしくてもう描くしかないと思ってやってみたら、文章にあるものを絵にするというのはこんなに大変なのかと……。ネーム作りも“このセリフは絶対いる”“これもこれも後で効いてくるエピソードだから”と、捨てるところがなくて、ページ数も増えてしまって。これほんとに私描けるかなと何度も不安になりました。

 でも、終わってみれば、元のお話がすごくきちんとできているので“私、おもしろいお話描いた!”と勘違いしてうれしくなるほどやりきった感があって、結果、とてもいいお仕事をさせていただきました

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『ココハナ』11月号(9/28発売)よりスタートした新連載『1日2回』も注目作だ。お互い結婚していたがひとり身になった幼なじみの男女を主人公とした、いくえみ先生初のアラフォーものである。

「(6月号掲載の読み切りを描いたとき)何も決めずに予告カットを出したら、担当さんが“アラフォーにも見えますね”とおっしゃったので、その設定にしました。読み切りのつもりが連載1回目みたいになってしまったので、そのまま連載になりました」

 マンガ家生活40年の長い道のりを、いくえみさんはこう振り返る。

「私としてはただ好きなことをコツコツと続けてきただけで特別なこととも思っていなかったのですが、受け止め続けてくれた読者さんがいてこその40年です。読んで喜んでくれる人がいてこその漫画描きなので、これからも誰かが一瞬でもおもしろいなあと思ってもらえるものを描いていけたらと思っています」

(構成・文/粟生こずえ)


《PROFILE》
いくえみ綾さん ◎北海道生まれ。恋愛漫画の名手として知られる少女マンガ界のトップランナー。『潔く柔く』(集英社)など著書多数。「FEEL YOUNG」で『そろえてちょうだい?』、「月刊!スピリッツ」で『おやすみカラスまた来てね。』、「ココハナ」で『1日2回』を連載中。