初代社長の死が転機となったのかもしれない。3年後、あにまる屋の社長に就いていた本多さんに辞表を提出する。

「当時、彼は独身で妹さんは結婚して実家を出られていたので、実家はお母さんひとり。

 お母さん思いだったので、“大阪に戻って母親の面倒をみます”ということでの退社でしたね。あれだけの腕前だったので、どこでも通じるという自信もあったんだと思いますけどね」(本多さん)

京アニへ入社し、発展に貢献

 その後、すでに設立されていた京アニへ入社。同社が以降、大きく発展したのは木上さんの功績が大きいことは誰もが口をそろえる。前出の田村さんが最後に木上さんと会ったのは関西へ仕事で行った2013年のこと。

酒を酌み交わしたのですが、やや身体が緩んでふっくらしていました。そのとき、“俺、実は結婚したんだ。会社の女性とね”と言っていました

 木上さんがプライベートな話をするのは珍しいことなので、それだけ幸せだったのかもしれない……。

 現在、エクラアニマルで仕事を続けている本多さんは、

彼はいろいろな作品が作れたと思うけど『小さなジャム~』を見ると、やはり子ども向けの温かい、ほっこりしたものがやりたかったような気がします。

 子ども向けアニメにこだわるエクラアニマルだからこそ、木上くんのこの絵本をアニメ化することを考えています

 木上さんが残した絵本には、少年が人のために行動する“本当の勇気”を持ったときに初めて魔法を覚えられるストーリーになっている。

 こつこつと裏方に徹し、世界のアニメ界に貢献してきた木上さんの最期が、今回のような災厄だったとはあまりに気の毒でならない。

※記事の内容を一部修正して更新しました(2019年10月15日21時5分)