根強い現金払い派は生産者にも

 地方の観光地ではどのような状況か。神奈川・小田原城近くで取材していると、ソフトクリームをなめながら店を出てきた人が……。

「持ち帰り扱いになっているはずだが、溶けてきたのでついペロッと。これってイートインになるんですかね」

 と苦笑いするのは都内で会社を経営する40代の男性。

箱根湯本の駅前商店街は外国人観光客も多く
箱根湯本の駅前商店街は外国人観光客も多く
【写真】店舗、商品別の消費税負担率表

 神奈川・箱根湯本を観光中の70代主婦は「私は現金払いだからポイント還元のポスターを見るとしらける」。

 小田原市内で地元名産品を製造・販売する男性経営者は、

「完全キャッシュレスになったら、うちみたいな中小規模の店はお金が回らなくなる。漁師さんからいい魚を早く仕入れるには現金払いが鉄則で、それは農家さんも同じ。キャッシュレスで伝票が積み上がっても入金は約1か月後だし、買いつける現金収入が必要。政府はそうした事情をどこまでわかっているんだろうか」

 と、あきれ顔だった。

 なぜ、ポイント還元があってもキャッシュレス決済に切り替えない人が多いのか。

 消費生活ジャーナリストの岩田昭男さんは「政府が誘導を間違えた」として次のように説明する。

「中心をスマホ決済に置いたのがまずかった。クレジットカードや交通系ICカードなど、多くの国民が1枚ぐらいは持っている“板カード”を中心に置けばハードルはグンと下がったはず。そっちで十分訓練を積んでからスマホ決済に移行すればよかった」

 高齢者や初心者にとっては、やり方が簡単か、手持ちの手段であることが大事だという。

「配慮が足りなかったということ。それと、僕はクレジットカード問題を30年取材してきたけれど、そのうち20年間は借金問題に取り組んできた。多重債務者とかね。この先、キャッシュレスで使いすぎる問題が噴出すると思うのでケアも必要」と岩田さん。