“ママを自慢したい欲望”の顕在化か

 男性が母親と親密な様子は、なぜ忌避感を覚えさせてしまうのか? 精神科医であり医学博士の春日武彦さんが説明する。

「“マザコン”という表現には、男尊女卑とか“女の上司の下で働く男なんてみっともない”といった価値観、精神的近親相姦といったイメージが付随しています。マザコン男はダメ男で、母親にしか相手にしてもらえない男……そういったイメージが残っている、ということでしょう」

 また昨今、“ママ好き男子”が増えている背景に対しては、

「今に始まった話ではなく、クラスメートの母親が美人だと、みんなが羨ましがったり息子も誇らしげな顔をしていたものです。つまり“ママを自慢したい欲望”は普遍的なものとして考えることができます。

 輪をかけて、近ごろのお母さんはおしなべてきれいです。かつてのような生々しい生活感を感じさせない。自慢するに足るお母さんばかりになると、ママ好きを公言する男子が出現しても不自然ではないでしょうね」と分析。

 さらに矢島も「LINEやインスタグラムなどのコミュニケーションツールの登場も大きいのでは」と話す。

家族同士でフォローし合うことも珍しくないし、スタンプひとつで感情を伝えられるので、より家族間が親密になりやすい。それに、ジャスティン・ビーバーなど外国人のインスタを見ると、母親を大切にしているような投稿が多い。そういうリスペクトを日常的に見る機会があったことも大きいですね」(矢島)

 ママ好きを公言している男子ばかりに焦点が当たりがちだけど、息子好きを公言するママが増えていることも忘れてはいけない。モデルの蛯原友里が3歳の息子に対して「ちっちゃな彼氏みたいで毎日キュンキュンしてます」と発言したように、ママタレたちが「小さな彼氏」と称する投稿を発信していることも興味深い。

 20歳の大学生を息子に持つ40代の女性は「母親サイドの心境の変化もあると思う」と話す。

「時代とともに子どもたちとの関わり方が変わるなかで、“完璧な母親像って何だろう”って考えると本当にわからない。でも、自分の母のような昭和的な“お母さん像”は、今とは違うなって。それに、昭和の母親像を求められるような社会でもないですよね」

 24時間、母親然としている必要はなく、保護者としての責任を果たせば、ともに楽しんでもいいのではないか。だからこそ、一緒にライブに行ったり、映画を見に行ったりもするという。先のアレクサのCMにしても、

「彼女が到着した後も母親と通話していたらおかしいですけど、きちんと通話を切っている。母親と仲がよい、そのうえで彼女を優先する。線引きができていると思うので、そこまで非難すること? って思っちゃいますね」

 と、“肉じゃが男性”に同情するほど。拒否反応を示す人の中には、かつて佐野史郎が演じた“冬彦さん”ではないけれど、前時代的な母親と息子の関係性しか知らないから、ついつい手厳しい意見を言ってしまうのでは!?