子どもが好きな授業を作れる学校

 その後、祥哉さんの人生を大きく変えたのは高校の選択だった。

「地元の友達とつるまないようにと、全寮制の学校を両親が探してきました。それが国内の地方の3校とインドネシアのグリーンスクールで、その中から僕がグリーンスクールを選んだのはピアスも茶髪もOKだから。それ以外はよくわからなかった(笑)」

 とはいえ、グリーンスクールの入学には英語力と意欲が必要だ。英語も話せず態度も悪かったため、最初の面接ではすぐに不合格。その後、語学留学をしながら親子でグリーンスクールを訪れ、なんとか入学許可が下りた。入学1年目は英語力が追いつかず、やる気も出なかったが、徐々に気持ちに変化が表れた。

グリーンスクールでは絶対に生徒を否定しない。あるときタバコを吸ったのがバレたけど、誰も怒らない。先生も寮長も、“タバコを吸うと健康にこんな害があることを知ってるかい? やめたくなったら協力するからいつでも相談して”って言うんです」

 授業は選択制で、中学から高校まで好きなテーマで自分に合う理解度で選ぶ。受けたいものがなければ授業を作ることも、先生になって授業を行うこともできる。DJやチョコレート作りなど面白いテーマがたくさんあった

 もともと、好きなことは集中し突き詰める祥哉さん。授業に積極的に参加するようになり、3年生になるとドイツのボンで開催された国連の気候変動会議(COP)に学校の代表として参加することに。旅費もクラウドファンディングで40万円を集めた。さらに、卒業発表に向け、農業プロジェクトを立ち上げて熱心に取り組んだ。

地元のオーガニック農場に自分で交渉して、天然の植物成長剤の検証をしようと試みました。農場は協力してくれて実験もできたけど、明確な結果が出ませんでした。本当はそのプロセスや結果をプレゼンする予定だったから、どうしようかと考えていたら、先生が“失敗をそのまま話せばいいんじゃない?”って

 それまでの学校では「結果」だけが求められ評価されたが、ここでは「失敗」も含めて学びにつなげることができる。プロジェクトの失敗をきっかけに、自分の人生の失敗を振り返るうち、祥哉さんは教育についての理解を深めていった。そして、アメリカの心理学者ハワード・ガードナーの『MI理論』に行き着き、プレゼンの最後に取り入れた。

「人間の知能の物差しはひとつじゃない。言語的、論理数学的、音楽的、身体運動的、空間的、対人的、内省的とさまざまな知能があって、読み書き計算や知識だけに偏っている一般的な学校教育だけでは伸ばせない能力もある。ひとりひとりの力を見ることが大切だって書いてあったんです」

 プレゼンは大成功。ADHDのことも含め、これまでの人生を初めて包み隠さず人前で発表し、教員、生徒、保護者から力強いスタンディングオベーションを受けた。

学校は与えられたことをやるだけの場所じゃない。自由な学び方もできるとグリーンスクールで初めて知った。それまで自分の可能性をつぶしていたことがもったいないと思った。だから、自分に合う教育を見つけて自分で選べる社会を作りたい

 現在は、大学に通いながら人脈を広げ、オルターナティブ教育を受けた同年代に声をかけ、日本の教育に合わないと感じている親子に向けて、個性を伸ばす学校の情報発信イベントを始動させている。

すべての経験が今の僕につながっている。ADHDであることにも、数々の人生の失敗にも、支えてくれた人たちにも心から感謝しています

「面白い学校」の卒業生たちとともにイベントを主催するなど教育改革に取り組む祥哉さん
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