日本の教育の限界!「個性」を伸ばす時代へ
汐見稔幸(東京大学名誉教授 教育学)

 数年前から、子どもたちの発達障害を心配する保護者や教員が増えています。発達障害は「自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害」だけでなく、チック障害、吃音なども含まれ、「生まれつき脳の一部の機能に障害がある」と定義されていますが、その表れ方は個人差がとても大きいのが特徴です。

 そもそも脳の働きには誰にも少しずつ濃淡があって、それを個性といっているのです。私だってADHDの症状はかなり当てはまるしスティーブン・スピルバーグも学習障害のひとつ、読み書きが苦手なディスレクシアだと公言しています。黒柳徹子さんだってそうですね。

 医学は身体の機能不全の原因を突き止めなければなりませんからある程度の細かな分類も必要ですが、教育にはそれとは異なる原理が必要です。

 教育でいちばん大事なことは、人を適性で分類することではなくて、その子の内部にある個性的な「生きよう」とするエネルギーを見つけ活性化させそのサポートをしていくことです。

 学校教育は、そもそも産業革命以降、人の指示に従って効率よく動く工業労働者や兵士を育てるために活用された面が大きい。日本でも少しずつ見直されてはいますが、根本的な教育スタイルは簡単には変わらず、子どもたちは、基本的に大人=教師の論理に合わせることを要求されてきました。

 社会の価値観は大きく変わっています。今までは均一なものを効率よく作ることが企業の使命でしたが、今は「違い」や「多様」にむしろ価値がある時代です。子どもが主体性や個性を発揮できる教育が必要とされているのです。

 学校に子どもを合わせる時代は終わり、教育が子どもに合わせる時代が始まっています。持続可能な社会の担い手となってもらう子どもたちに、その子の個性を考慮してどんな教育が可能か考え、サポートする。そうした先駆的な学校は世界でも日本でも作られ始めています。そのうちのひとつがグリーンスクールなのだと思います。

バリ島『グリーンスクール』
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(取材・文/太田美由紀)