レバノンから出ない限り逮捕はない?

「レバノンとの間で犯罪人の引き渡し条約が結ばれていないため、日本政府は全くの無力。逃げられた時点で終わり」

 と話すのはジャーナリストの大谷昭宏氏。元東京地検特捜部検事で東京靖和綜合法律事務所の高井康行弁護士も、

「レバノン政府がゴーン被告を匿(かくま)うのをやめて第三国に出国させない限り、日本に彼の身柄が引き渡されることはないでしょう」

 日本政府は国際刑事警察機構(ICPO)に対し、国際逮捕手配を要請。加盟国はゴーン被告の身柄拘束や引き渡しを求めることが可能となったほか、レバノン国内やトルコでも別の罪で告訴されているが、

「処罰するのはそれぞれの国の裁判所です。有罪になればその国の法律に従った刑罰を受けますが身柄が引き渡されるわけではありません。日本で起こした事件とは別問題ですから」(前出・高井弁護士)

 7日、大久保武・駐レバノン日本大使と会談した同国のアウン大統領は「全面的な協力を惜しまないことを約束する」としていたが、どこまで本気で応じるのだろうか。

キャロル夫人(53)の逮捕はありえる?

「入国管理法違反の幇助(ほうじょ)あるいは教唆や共同正犯。犯人隠避の罪に問われる可能性も考えられます」

 と説明するのは前出・高井弁護士。しかし、逮捕には、

「証拠を固め、容疑が固まれば逮捕状は出せるでしょうがゴーン被告同様、レバノンがその気にならないと夫人の身柄も引き渡されません」

 東京地検特捜部は7日、キャロル夫人に対して昨年4月に裁判所で行われた特別背任事件の証人喚問でうその証言をした「偽証の疑い」で逮捕状を取ったことを明かした。

 夫人は仏大衆紙のインタビューで逃亡関与を否定、ゴーン被告も会見で憤りをみせた。