ADHDを理解し丁寧に使ってほしい

 その事実はウェブマガジンの連載で公表された。

「ADHD、発達障害という言葉の使い方が雑すぎるというのが気になっていたんですね。それを言いたくて書いただけ。ところがものすごく話題になって。逆にびっくりしちゃいました」

 勝手に自己判断して「僕はADHDだ」と言ったり、素人の思い込みにすぎないのに「あの人はADHDだ」と言ったりすることが気になった。

「あとは発達障害が不吉なものみたいに“うちのクラスに発達障害の子がいてね”とか。“私の子どもが発達障害だったらどうしよう?”とか、そうなったら人生終わりみたいな感じで語る人がいるのも気がかりでした」

 こんな使い方も気になるという。

「いや俺、キャラ立っているのはADHDだからなんだよね。協調性とか全然ないし、思ったことガンガン言っちゃうのもそのせい。マジであの項目、全部当てはまるし」

「テレビに出ているあの人もきっとそうだよ。おんなじ匂いがするんだよね」……

 小島さんが苦笑する。

「何の根拠もなく、人とちょっと違っていて、才能があるというのをADHDと自称したり、他人を勝手に決めつける。正しいADHDの理解を歪めていると思います。ちゃんとADHDというものを知ったうえで、もっと丁寧に使ってほしいと思ったんです」

 診断を下すのは精神科医であり、自己診断は禁物だ。

 しかし、この障害は、ときに小島さんの仕事では役立つこともあるらしい。

「細かいことをいちいち考えているので、描写が的確で、物事を説明するときに要約したり詳細な説明にしたり自在に切り替えることができるんですね。長年の工夫の積み重ねと、診断をきっかけに得た知識と、周囲の理解のおかげでこの特徴は、今ではむしろ“ギフト”であると思えるようになったんです」

 小島さんのマネージメント業務を担当する株式会社ビッグベンの羽地健さんが言う。

「実際、仕事で関わっていると、小島さんの文才、言語力、記憶力などすごいなあと思います。事前構成なしで、アドリブで90分話ができて、テーマにも沿っていて、講演を聴いた人の心をうつ、なんてめったにできませんよ」

 小島さんは、自分もしくは「わが子が」発達障害であるかどうかの診断は、必ずしも必要ではないと言う。

「ポイントは、困っているかどうか。困ってなければそれほど気にする必要はない。もし困っているのであれば、その困りごとを解決するために助けが必要です。そのためには、ちゃんと専門家に相談して、診断が下ればお薬で助けてもらうこともできるし、診断が下らなかったとしても、どういう対策をすればいいかアドバイスをもらえます」