名曲の封印を解いて「自分の原点だからね」

 持ち前の負けん気で頑張ってきた梓さんを昔から知る、歌手の田辺靖雄が振り返る。

「一昨年の『徹子の部屋』で会ったのが最後でした。昔から頻繁に人と会うタイプではありませんでしたね。足を悪くして人に会うのがおっくうになっていたのと、半年前に溺愛していた飼い犬をなくして落ち込んでいたようです」

 封印していた『こんにちは赤ちゃん』については──。

「長い間、あえて歌っていないというのは知っていました。大ヒットした曲だから、ずっと彼女について回っていた。“自分はもっと新しいことができるんだ”という自負があるのに、要求されるのは『こんにちは赤ちゃん』。ジレンマを抱えていましたね」

 封印を解いてからは「自分の原点だからね」と、梓さんは言うようになったという。

「昔から裏表のないタイプ。特に大事にしていたのは『梓みちよ』というブランド。コンサートでは、会場やバンドを指定して“これじゃなきゃやらない!”というところがありました。最後まで歌手としてこだわりを貫いたのは幸せだと思います」

 本当の自分を探す旅を終えた昭和の大歌手に合掌。