「1度死のうと思った僕が変われたのは」

 ただ、判決を下されてからは思い悩むことも多かった。

判決から2年くらいたって、“執行猶予の4年間は精神的にもたない”と思い、1度、本気で死のうと思いました。それは薬を使いたいわけではなくて、孤独からです。当たり前ですが、これまで関わってきたほとんどの人が僕から離れていきました。それはそうだろうなと受け入れ、僕自身も、執行猶予期間が切れるまでは謹慎して、誰にも会うことなく反省を繰り返すものだと考えていました。ですが、ひとりで考えていてもいったい誰に謝罪し、どう反省を示せばいいのかまったくわからなかったんです

 一部のメディアの報道も、高知を追い込んでいった。

心が崩れてしまうので、自分に関する報道を見なければいいのにどうしても気になってつい見てしまうと、別れた妻と復縁するだの、彼女から1億円もらったなど、まったく事実と違うことを報じられました。彼女とは離婚後いっさい連絡をとっていないのに、そういう報道が出ることで、また彼女を巻き込み、傷つけてしまうことが苦しかったです……

 そんな彼を救ったのが、新しい人たちとの出会いだった。

「僕の担当医は、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦さんです。松本先生に、執行猶予というのは回復して社会復帰するための期間なのだと教わりました。その後、自助グループにつながり、同じ痛みや苦しみを持つ人と出会い、この孤独やつらさを抱えているのは自分だけではなかったと救われた気持ちになりました。そうした出会いがあったから、こうして取材を受けることもできるようになったんです。いま、僕は本当に気持ちが楽なんですよ」

 心機一転した高知は、ライブや講演会、さらにはインターネット上で放送されるドラマの撮影など、新しいことに挑戦していった。このドラマは、彼にとって5年ぶりの俳優活動となった。

最初に出演のお話をいただいたときは、“愛人、薬物、ラブホテルとスリーカードそろった僕と共演してくれる人なんていない”と思っていました。でも、僕がもう1度出ることで、同じ依存症で苦しむ人たちが励まされると言われ、俳優に復帰することを決意しました

 共演者やスタッフも集まったことがうれしかったという。

「同じ芸能界の人の反応はすごく怖かったけど、みなさん“頑張って”と温かい声をかけてくれました。自分がしっかり反省してきちんと前を向いて正しい知識の中で生き直していれば、周りの人たちが受け入れてくれるとわかりました。最近、年のせいか涙もろくなってしまったのですが、撮影が無事終わったときはうれしくて泣いてしまいました」

 今後の目標について聞いてみた。

1度は死のうとまで考えた僕が変われたのは、仲間たちと出会い、彼らに助けられたからです。僕は本当に生き直したいと思っています。1年後、2年後に社会がどう変わっていくかわかりませんが、僕をこういうふうに思わせてくれた人たちのために、今度は自分が困っている人の役に立ちたいと思います。執行猶予が切れる、切れないに関係なく、悩んだり、苦しんだりしている人に正しい知識を持って言葉をかけ、助ける側にまわりたいですね

 いつか高知に救われる人が出てくることだろう!