2.貸借人の修繕の権利

入居者が設備を直し、費用を請求することが可能に

 台風で雨漏り、老朽化でトイレから水漏れの場合、前提としては貸借人が勝手に賃貸物に手を加えてはいけないのだが、それでは不便が生じることも。そこで、民法改正にて、(1)賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか、または賃貸人がその旨を知ったのに、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき、または(2)急迫の事情があるときには賃借人が目的物を修繕することができ、その費用を賃貸人に請求することができると明文化された。

 しかし、相当の期間内とは何日なのか、急迫の事情とはどんなことかなどが法律で具体的に定められているわけではないため、注意が必要。

「急いでいたからと勝手に修繕をしてあとから貸主に請求をしても、“急迫の事情に当てはまらない”と認められない可能性もあります。修繕の必要が生じたら、まずは必ず貸主に連絡するようにしましょう。その後、きちんと交渉し、確認することが肝心です」

【大雨のあとなどには念のために確認を!】
 今は記録的な大雨や台風、地震など、日本各地で自然災害が増加傾向にある。被害というほどではないが、例えば「大雨が続いたあとに天井のすみにシミを見つけた」、「地震のあとで壁に小さなヒビを見つけた」など、何か気づいたことがあれば、その時点で大家さんや管理会社に連絡するといいだろう。退去時のトラブルを防ぐことにもつながるので、修繕の必要を感じていない場合にも面倒がらず、“リアルタイムで異変を伝える”ことが得策だ。

3.貸室設備の一部減失による賃料減額

設備に不具合などがあれば家賃が日割りで戻ってくる!

 備え付けのエアコンが壊れて使えなくなったなど、物件の一部に不具合などが生じた場合、それが貸借人の過失によるものでなければ、賃料から相当分を返してもらうことが可能である。

 民法改正では「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用および収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」(改正民法第611条)とされ、これまで“賃料の減額を請求できる”から“当然減額”と厳格化された。

 ただし、具体的な金額などが定められているわけではないので、減額を求める際にも実際には話し合いが必要となる。

「いくら減額できるかの目安は、(公財)日本賃貸住宅管理協会の『賃貸設備等の不具合による賃料減額ガイドライン』を参考にするとよいでしょう」

 減額の目安については、写真ページの一覧表も参考にして欲しい。