県民感染第一号になりたくない

 そして核心となる「感染者がゼロもしくは少ないのはなぜ?」と聞くと、

「そもそも国内外からの人の移動が少ない」(岩手・43歳男性)

「有名企業もなければ、砂丘以外人気の場所がないから人が来ない」(鳥取・64歳男性)

 なんて自虐的なコメントも。ただ、検査については思うところがあるらしく、

「実際に検査数が少ないだけで、隠れ感染者がいるのでは? 今はとにかく県民感染第1号になりたくない」(岩手・54歳女性)

「自分のことや他人のことを思いやっている結果だと思うが、仮に自分が感染してしまったら、周囲の目が厳しいのはわかっているから」(島根・55歳女性)

 実は、このような意見は多く、感染したらすぐに身元がバレてしまうので、それだけは避けたいという気持ちが慎重な行動に結びついているようだ。また、

「人口がもともと少なく密度も低いので、濃厚接触しにくい」(島根・47歳男性)

 なんて声もあるのだが、人口密度でいうなら、全国43位の島根県より下になる44位の高知県では50人以上の感染者が出ている。高知といえば酒豪が多く、酒の席でも豪快に集まって……という県民性のイメージがある。この“イメージ”について鳥取県の39歳男性は、自身の県について、

「比較的おとなしい県民性なので、自分が感染しているかも、と思ったら自宅にこもる方は多いと思います」

 なるほど。こうした県民性も感染者の少なさに関係しているのかもしれない。県民性博士として知られる矢野新一さんに話を聞いてみた。

「3県の県民性にはいろいろな共通点があります。まじめで勤勉で保守的で排他的。このような“気質”が感染予防のいい方向に向いているのではないでしょうか」

 そして、冒頭の“3密”といわれる、感染しやすい環境の3条件についても、この3県は縁遠いのだという。

「密集という点では、人口密度の全国ランキングで岩手が46位。島根が43位で鳥取が37位と低いです」

年間100万人以上が訪れる、鳥取県の鳥取砂丘
年間100万人以上が訪れる、鳥取県の鳥取砂丘
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 ちなみに人口だと鳥取が最下位で、島根がその次。人口密度の最下位は北海道だが、200万人都市・札幌があり、雪まつりでコロナ発症者が急増してしまった。話を3県に戻すと、

「密接という点で統計的な数値はないですが県民性としては、この3県は全国でも“群れる”とか“集まって騒ぐ”ことが少ないんです。密着という点でも、話す距離、いわゆるソーシャルディスタンスが離れていて騒がしくしない。例えば大阪などは人と人の距離が近いですし、話し方も騒がしいですよね(笑)」

 コロナにも“沈黙は金”!?

 残された岩手県の健闘は、いつまで続くのか─。