どんなに努力しても、
人の気持ちは手に入らないことも

 婚活において努力は大事。しかしながら、どんなに努力をしたとしても、お相手の気持ちが必ず手に入るとは限りません。そこがまた難しい。

 篤男さん(38歳、仮名)は、聡子さん(36歳、仮名)とお見合い後、交際に入り、2度ほどデートを重ねました。

 聡子さんは、お見合いをしたときから篤男さんをとても気に入っていました。

婚活をして2年になりますが、初めて素敵だなと思う男性に巡りあいました」

 お見合いを終えたときにこう言っていたので、私はこんなアドバイスをしました。

「結婚相談所では仮交際の時期は、ほかのお見合いをしてもいいし、何人とおつきあいをしてもいいことになっているでしょう? それは仮交際が、 “お人柄を見る期間”だからなのね。篤男さんは見た目も素敵だし、年収もいいほうだから、お見合いのお申し込みも多いと思う。もしかしたら聡子さんのほかにもおつきあいしている人がいるかもしれない。だから待っているだけでは、ダメよ。気に入っていただけるように“選ばれる努力”もしましょうね」

 聡子さんは、私のアドバイスに大きく頷いていました。篤男さんとの初めてのデートは車で郊外にドライブに行くことになったのですが、聡子さんは早起きをして、お昼にふたりで食べるお弁当を持参。そして、2回目のデートのときには、手作りのクッキーを持って行きました。

 しかし、2回目のデートを終えたところで、篤男さんの相談室から、“交際終了”の連絡が来たのです。

 私は、聡子さんがいつになく一生懸命だったのを知っていたので、篤男さんの相談室に連絡を入れて、“交際終了”の理由を尋ねました。

 すると理由は、こうでした。

「『大切に思ってくださる気持ちが伝わっていたので、“交際終了”を出すのは、心苦しい』と言っていました。ただ、会話をしている中で、『結婚したら、こうしたい』『結婚したら、こんな家族を作りたい』と、会話に『結婚したら』という言葉がたくさん出てきたというんです。彼女と結婚するというイメージがまだ持てないうちに、手作りのお弁当や手作りのお菓子をいただいて、会話を交わすと理想の結婚の話をされる。それにだんだん戸惑うようになり、苦しくなってしまったようです。このまま期待を持たせておつきあいをして、最終的に結婚に進めなかったら、彼女を傷つけてしまう。それなら今、交際終了にしたほうがいいと判断したようです」

 篤男さんの言うことはもっともなことです。しかし、これは理屈ではなく、彼は聡子さんが“タイプではなかった”のでしょう。気の遣えるとても優しい女性だというのはわかる。でも、異性として好きになる顔だったり雰囲気だったり喋るテンポではなかった。もしも聡子さんが“タイプの女性”だったら、「結婚したら、こうしたい」と話をされたときに、戸惑うどころか手放しでうれしくなったと思うのです。

 “選ばれる努力をする”ことは、婚活にとても大事なことです。でも、人を好きになるときに、“タイプかどうか”は、気持ちが動く大きなきっかけになります。生理的に受け付ける、受け付けないとは別の話で、生理的に受け付けたとしても、異性としては好きにならない場合もあります。

 相手にとって“タイプの異性”でなければ、どんなに努力をしても、相手の気持ちを手に入れることはできません。

 人を好きになったら、その人に振り向いてもらうための努力は必要。でも、どんなに努力をしても手に入らないことがあるのが、人の気持ちなのです。そこは肝に命じながらも、“選ばれる努力”を惜しまない人が、いくつかの失恋の後に、運命のお相手に出会えるのです。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/