最近、受け子として逮捕された人たちから聞かれるのは、「コロナ不況」という言葉です。埼玉県の80代男性からカードを詐取したとして逮捕された19歳の男は、「新型コロナの影響で仕事がなくなったから」と、お金に困った末に犯行に及びました。

 岡山市の80代女性からカードを騙し取ったとして逮捕された20代の男2人も「仕事がなくなり、アルバイトを探していて、この受け子の仕事をした」と供述しています。

 このようにコロナ不況のあおりを受けて、その状況を「リベンジして稼ぎたい」という思いを、詐欺の仕事を紹介する「リクルーター」が巧みに利用しているのです。

 もちろん、犯罪の誘いにのった人間が悪いことはいうまでもありませんが、現状に対する「リベンジ」を考える心につけいってくる、上手の詐欺師がいることを忘れてはいけません。ですので、絶対に軽い気持ちで闇バイトの募集に電話をしてはいけないのです。

その株、本当に大丈夫?

 ほかにも、株で大損をするなどして、コロナ不況の影響を受けた人もいるかもしれません。その損した分を取り戻そうとリベンジを考えている人にも注意してほしい手口があります。

 国民生活センターには、すでに次のような相談が寄せられています。

 80代女性のもとに、大手薬品会社から、社債発行の案内と、新型コロナウイルスの治療薬開発についての書類が入った封筒が届きました。後日、その会社の社員を名乗る者から「今、政府の要請で新型コロナウイルスの治療薬を開発している」と怪しい電話がかかってきたそうです。

 今後、新型コロナの治療薬やワクチン開発が話題になりますので、それに便乗して、このケースのように社債や未公開株などの購入を持ち掛ける詐欺が多発することが考えられます。

 多くの人がコロナ不況からの脱却を目指そうとする中で、詐欺師たちは「損失を取り戻したい」「リベンジしたい」という私たちの気持ちを巧みに利用してきます。くれぐれも詐欺師たちの口八丁な話にのせられないように、注意してほしいと思います。

多田文明<ただ・ふみあき>
1965年生まれ。詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。ルポライターとしても活躍。キャッチセールスの勧誘先など、これまで100箇所以上を潜入取材。それらの実体験を綴った著書『ついていったらこうなった』はベストセラーとなり、のちにフジテレビで番組化。マインドコントロールなど詐欺の手法にも詳しい。そのほか『だまされた! 「だましのプロ」 の心理戦術を見抜く本』など多くの本を出版、テレビやラジオ、講演会などへの出演も。