最低でも年1回はメンテナンスを

 安全に運転をするためにはまず大人や親がルールを守ることは必須だ。

「親子交通安全教室で子どもたちに“赤信号で止まるんだよ”と説明した帰りに、親が子どもを自転車に乗せ、赤信号を渡っているところを見たことがあります」

 と長嶋さんは苦笑する。

「令和元年中における自転車事故の54%に、信号無視、一時不停止、前方不注意など自転車側になんらかの違反がありました」(前出・警視庁)

 とルールを守らなかったことで事故になったケースもデータとしても示されている。

「危険な運転をしている大人たちを見れば子どももそれでいいと思ってしまうんです。

親世代がきちんとした運転をしないと学校教育だけでは足りません」(遠藤さん)

 交通ルールは守っていても、メンテナンス不足でタイヤの空気が抜けている、ブレーキが効かず事故につながるなど、整備不良が原因の事故も起きている。

 日ごろの点検・確認はもちろんだが、自転車安全整備士の資格を持った人に継続的な点検や整備を受けることができるような自転車店での購入が望ましい。

 デザイン性や値段などを重視する雑貨店や通販などで購入した場合、組み立て後の安全確認が不十分になる可能性も指摘されている。本来、自転車の組み立てには自転車技士の資格が必要。

 特に通販で購入、自分で組み立てるときには注意が必要だ。ボルトを締める強さがわからず、運転中に突然ペダルがはずれて大ケガを負ったり、締め方が緩いために、ハンドルがぶれて転倒するという事故もありうるという。

「危険な状態は一般人が見ただけではわからないのでプロの手に委ねる、公的な検査機関が安全と認め、一定の基準を満たしたBAAマーク付きの自転車を買うことが大切です」(遠藤さん)

 公道でも見かけるようになったキックボードも同様だ。

 自転車保険は適用されないが事故を起こせば同様に不法行為責任が問われ、高額な損害賠償額を請求される。そんなときにはすでに加入している火災保険などで、マンションの水漏れや自分の過失で相手になんらかの損害を与えたときに賠償してくれる『個人賠償責任保険』が適用されることがある。

 一方、自転車側にも言い分はあるだろう。交通量の多い道路、路上駐車……ルールを守り、車道を走ろうとしても危険性が高く、歩道を走らざるをえない現状がある。

「日本では自転車専用道路が非常に少ない。そのことが自転車と歩行者の間の事故につながるんですよ。自転車も加害者になるから運転を気をつけろというのはそのとおりです。

 しかし、現状、車道を走るのは非常に危険です。逆に車道を走ったために車と接触し大ケガをしたり、亡くなる人も後を絶たない。

 安全に走行するためには、歩行者はもちろんですが、自転車で走る人の保護もしないといけません

 と古田弁護士は訴える。

 遠藤さんも、

「自転車だけが危険な乗り物というのも違うと思います。でも、免許がない、車検がない。だからこそ乗る人の意識にすごく責任が委ねられているんです。そこを意識すればだいぶ事故は防げます」

 自動車学校に通ったつもりでルールを学ぶ、車検のかわりに、少なくとも年1回は、整備点検を受けることが安全に乗るための第一歩だ。