Q.なぜ彼らはホームレスになったのか?

「いろいろなケースがあります。多いのは、日雇い労働で日銭を稼ぎ、そのお金で簡易宿泊所に泊まる。そういった生活を続けていく中で、例えば病気や身体を痛めてしまうなど、働くことができなくなってしまったケースですね。それこそ、犯罪を犯して一般社会からドロップアウトする場合もあります。今だと、ネットカフェやサウナを泊まり歩いている人たちも、この境界線にいる人たちです」

 こういった人に対して“定職につかないのが悪い、仕事なんて選ばなければいくらでもある”といった言葉をかける人も少なくない。

そういうことを言う人は、組織に属しているサラリーマンが多いのかもしれませんが、自分とその周りの環境を基準にしているんでしょう。でも、誰もが五体満足で言葉も話せて、ちゃんとした学歴や免許もある、という人ばかりではないんです。

 確かに、不況などが原因でホームレスになってしまった人は、景気がよくなれば社会復帰できる可能性は高いです。でも、その人の性質として、例えば酒を飲んで朝起きられないとか、日雇い労働自体を続けることが難しい人もいるんですよ。学校でもみんなと同じ生活ができない人っていたじゃないですか。

 その人の生活環境も関係してくるし、現在の社会のシステムに適応できない人が常に何%かはいるということをわかってほしいです

Q.河川敷で暮らしているのはホームレス?

 以前ニュースで、河川敷に家を建てて生活しているホームレスが報じられることもあった。

「実際“レス”じゃないですよね。僕が取材した中では、3LDKで80平方メートルほどの庭つきの小屋がありました。僕の自宅よりもずっと広い(笑)。ただ、水害が起きたときはすべてが流されてしまうというリスクを伴っています」

 村田さんによると、河川敷で暮らしているホームレスは“ベテラン”なのだという。

「公園、駅舎よりも、河川敷のほうが“ベテラン度”が上がるんです。ホームレス生活が長くなればなるほど、人の社会からどんどん離れていくんですね。ホームレスは、街に寄生するのが特徴なんです。公園や駅舎は街そのものですが、河川敷までいくと、街に寄生しつつも独自の社会というか、不法滞在のスラム街に近くなります。場所によっては家庭菜園をやっていたり、そこが好きだから住んでいるという人もいます」

 しかし河川敷は、国や自治体などの所有地で、そこに家を建てれば不法占拠となる。また、こういった報道を見た一般人からも、バッシングが増えるという。

「彼らが幸せそうに暮らしているのを見ると、一般人が怒るんだそうです。毎日イヤな思いをしながら仕事して生活している俺より、なんでこいつらがこんなに幸せそうなんだ、って。不幸なら許してやるけど、自分より楽しそうというのが我慢できないという心情なのでしょう」

村田らむ著『ホームレス消滅』(幻冬社刊)※記事の中で画像をクリックするとamazonのページに移動します

むらた らむ◎ライター、イラストレーター、漫画家。ゴミ屋敷、新興宗教、樹海などをテーマに取材活動を続けている。近著は『ホームレス消滅』(幻冬舎刊)

(取材・文/蒔田稔)