コロナ禍で仕事に困り、求人雑誌やサイトをみている人も多いかもしれません。しかしそれは本当に安全なものでしょうか。大手の求人募集の記事を見て、海外での買い付けバイトに応募。その後、1000万円の被害に遭ったAさん(50代・女性)を取材した、ジャーナリスト・多田文明さんからの報告です。

きっかけはアルバイトの応募

 Aさんは、被害に遭う2年ほど前から生活に苦しんでいました。というのも、更年期からのうつ症状になってしまい、1年間仕事も休み、療養していたからです。当時は旦那とも離婚したのに加えて、高齢の母とともに住み、学生である2人の子を育てていかなければなりませんでした。

「精神的に病んでしまい、仕事もできません。子どもを育てられない自分はもう母親失格だと自分を責めてしまい、水しか飲めないような日々が続きました」

 そんなAさんが何とか病気を克服して見つけた仕事が、海外での時計の買い付けのアルバイトでした。
 
 Aさんはまず、東京・中野にあるブランド時計の輸入販売をする店舗でIという男と面接をしました。仕事の内容は「バイヤーとして海外に行き、ブランド時計を購入する」というもので、Iからは「現地までの航空費、ホテル代は当社が持ちます。そのとき、自分のクレジットカードを使って購入してください。報酬として、時計の代金に6%のコミッション(委託料)をプラスしてお支払いします」という説明があったといいます。
 
 しかし、彼女は自分自身のカードは支払いが滞っていて使えない状態。さらに母親のカードはショッピング枠が200万円になっており、高額な時計の購入金額には足りません。

 そうしたお金の話をするなかで、男はAさんが都内一等地に自宅マンションを持っていることを知り、彼女にこう話を持ちかけたのです。

「では、マンションを担保にして、お金を借りてはどうですか? その資金を元手に、時計の買い付けをしましょう」

 どうしても仕事をしたかったAさんは、結局お金を借りることに。後日、会社の関係者に連れられ、母親らと金融会社に行ったAさんは、マンションを担保にして1500万円の融資を受けられることになりました。すると、そこで男はさらに次のような提案をしてきました。

「実は、これから新宿にもう1店舗お店を出そうと思っています。そこに出資してもらえませんか? ゆくゆくはあなたを店長にしようと考えています」

 それは1200万円を出資金にして、残りの300万円はキャッシュで時計を購入する代金に充てるというものでした。

“利息を含めた月の返済額15万円は当社が払う。さらに40万円を毎月支払う”とIさんは約束してくれました。20年間の返済すべての面倒を見てくれる上に、毎月それだけのお金を支払ってくれるなら生活も楽になるかもしれない。家族もしっかりと養っていけると思ったんです」

 そう感じたAさんには、もはや断る理由はありませんでした。