ADHD“D”
できること・できないこと

 小さいころは、成長の過程だと受け止められたことも、集団生活が始まると、できること・できないことが現実化します。でも、習得までに時間はかかったとしても、できないことも、必ずできるようになるはずです。

 これまでの固定観念や、情報で判断せず、目の前にいる子どもをしっかりとみること。子育てのハードルをぐんと下げて、子どものスモールステップをともに楽しむことが大切なのかな。

最初の大きな壁は「漢字の読み書き」

 幼稚園時代は、お友達に「どうぞ!」がなかなか言えず、気持ちの切り替えも苦手でした。小学校に上がると、静かにしていなくてはいけない授業や、同級生とのコミュニケーションなど、集団生活が始まると「できないこと」として見えてきます。

 最初の大きな壁は、2年生での「漢字の読み書き」でした。まず、ノートのマスの中に書くことができません。枠からはみ出し、左右のバランスもとれません。お手本通りに書かせるのが本当に大変!

 やっとイスに座ったかと思うと、喉が渇いたと言い、ジュースを飲みに席を立つ。なんとか座って書き始めると、今度は息苦しいと言い、ベランダに出て深呼吸。やっと気持ちを切りかえてイスに座ると、今度は消しゴムのカスで遊び始める始末。頭がハゲそうでした!(笑)

コタくんが5歳のとき、かーちゃんが付箋に書いた自分へのメッセージ。効果大で、イライラが減ったそう 撮影/カワムラヒサコ
コタくんが5歳のとき、かーちゃんが付箋に書いた自分へのメッセージ。効果大で、イライラが減ったそう 撮影/カワムラヒサコ
【4コマ漫画】コタくんとかーちゃんのクスッと笑える毎日

 とにかく、コタは集中力が超~短いので、短期決戦でどこまで進められるか、サポートする私の器量にかかっていました。宿題は、夕飯前に少し、夕飯後にまた少し、それでも終わらないときは、朝5時半くらいに起きなくてはならないくらい、時間がかかっていました。

 私もコタも下校時間が近づいてくると、あ~また漢字の宿題をやらなくちゃいけないんだ……と、かなり憂鬱になっていた時期です。当時の彼の筆箱のなかの鉛筆は、噛まれて全部がガギガギになっていました。今思うと、漢字を書くという行為が、コタにとっては本当にしんどかったんだなと思います。

いい意味での“手抜きかーちゃん”に生まれかわる

 そんなころ、学校で特別支援教室が利用できるようになりました。

 面接で悩みを相談すると、「漢字は読めれば、書けなくても。20歳くらいまでに小学校レベルの漢字が習得できればいいですよ」と先生。「えっ!? 息子はそんなレベル!?」と、現実を知るとともに、これがきっかけで、肩に乗せていた“がんばらなくちゃいけないかーちゃん”を降ろし、いい意味での“手抜きかーちゃん”に生まれかわりました。

イメージは合ってる!? 直すのがもったいない 撮影/カワムラヒサコ
イメージは合ってる!? 直すのがもったいない 撮影/カワムラヒサコ

 まず、漢字は1マスに書くのをやめて、4マス分を使って大きく書いてもいいように、担任の先生にお願いしました。さらに、一度にたくさん書くのもやめ、数も減らしてもらいました。

 すると、それ以降、鉛筆を噛むこともなくなり、朝5時半起きもなくなりました。本人にとって何が負担なのか? それを見つけて寄り添うことが重要だと気づけた出来事です。