スモールステップをともに楽しむ

 しかし、壁はまだまだやってきます(笑)。次の課題は「縄跳び」。「なわとびコンクール」という学校行事が毎年あるのですが、個人競技はさておき、問題はクラス対抗長縄競技。コタが飛べないとクラスの対抗戦に影響があるため、練習しなくては! と、長縄をネットでポチッと購入。親子で特訓が始まりました。

 1日目。長縄の片方を自転車に結び、いざ回してみると、両手を上げて飛ぶので手が縄に引っかかってしまいます。何で万歳して飛ぶの? と、思ったら、手を挙げて飛ぶタイミングを計っているようです。手がひっかからないように、万歳をやめて両手を胸にクロスするようにアドバイスして、1日目が終了。

 2日目。なぜか練習の始めに、なわとび歌の「ゆうびんやさん」をやりたがるコタ。早く練習をさせたい母心は横に置き、「ゆうびんやさん」からスタート。

 ここはもう、「ゆうびんやさん」をやらない理由がないことを、かーちゃんは知っているのです。まずは付き合うこと。彼のモチベーションをあげることが、苦手なことをやらせるときになにより大事。2日目は、ゆうびんやさんが10回飛べたところで終了。

 3日目も「ゆうびんやさん」からスタート。リズム感が良くなっているよう。そしていよいよ、本題の長縄の練習へ。縄に入るタイミングをつかみやすくするために、「1、2、3!」とか「いまっ!」とかの声掛けをするも、それでも飛べないコタは、「かーちゃん、その掛け声やめて!」など、文句の嵐。さすがのかーちゃんもキレ始める。

 しか~し! ここでコタの暴言にまんまとのって怒ってしまうと、練習にならないのでお菓子で誘導、これも母の訓練と自分に言い聞かせます。縄に入るタイミングを3、4回待っていたコタが、2回で入れるようになってくると、涙が出るほどの喜びが、かーちゃんに押し寄せました。

 汗だくでがんばっている息子が、憎たらしい存在から、尊敬する存在へと変わったのです。「よくがんばってるぞ! 息子よ。小さな感動をありがとう」と息子をハグして3日目が終了。

 それ以降は縄に入るタイミングが格段に上達、最後には八の字クロスでも、1、2回で入れるように。本人の顔にも自信が生まれました。

 このように、漢字も縄跳びもいろんなことが、他の子どもたちより、習得までにとってもとっても時間がかかります。でも、できないことは、必ずできるようになると信じ、コタのスモールステップをともに楽しんでいます。できること・できないことにあわせて子育てのハードルを下げてみると、途端に一緒にいる時間が楽しくなりはじめます。

漫画/大田垣晴子(カワムラヒサコ『さんかくの本 ADHDの子育て』より)
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できないことがあっても、いいじゃない!
かーちゃんの子育て格言

●「志は高く、子育てのハードルは低く」
●「成長は、息子の超短い集中力との戦いだ!!」
●「小学校の勉強は基本、暗記です。それができなくても×ではない」
●「子育てを工夫しようとする親たちに、悪い人はいない」
●「みんなと同じペースで勉強できなくてもいい、学校だけで人生は決まらない!」
●「小さくたって子どもは、尊敬できる大きな存在」
●「事件は警察、火災は消防、子育てに困ったときは近所のママ友」
●「車の運転は、オートマで。子育てはマニュアル運転で」

カワムラヒサコ著『さんかくの本 ADHDの子育て』(秀和システム) ※記事内の画像をクリックするとamazonの紹介ページにジャンプします

カワムラヒサコ
写真家/麻の服屋さん「quiraku niキラクニ」オーナー。東京生まれ。写真家・佐藤孝仁氏師事後2001年より独立し、夫とともに有限会社SHIBARAKUを設立。2014年に麻の服屋さん「quiraku niキラクニ」ネットショップをオープン。広告・雑誌などの撮影のほか、障害のある方々が就労している福祉作業所のブランディングにも携わる。
https://quirakuni.base.shop