婚外子の場合、母親が子の親権を持つ

 婚外子の場合、母親が子の親権を持っています。そして彼が子どもと面会するのは親権者の許可が必要です。そのため、子どもを彼と面会させるかどうかは真美子さん次第です。もし彼が1日に何十通もメールやLINEを送ってきたり、「会わせないとただじゃおかない!」と脅しめいた表現を使ったり、「お前の頭のおかしさが遺伝したらかわいそう」と人格を否定したりした場合、そのことを理由に面会を断ることも可能です。彼はすでに真美子さんの電話を着信拒否、メールを受信拒否、そしてLINEをブロックしています。それなら真美子さんから同様のことをされても文句は言えないはずです。いっそのこと音信不通にしたほうが手っ取り早いでしょう。

「認知しないとお子さんの戸籍の父親欄は空白のままです。婚外子は珍しくありませんが、さすがに父親が不明の子は目立ちます。将来、結婚する際などに悪影響が及ぶかもしれません。将来的に別の男性と結婚し、その男性に認知してもらうつもりなら、父親欄を空けておいてもいいですが、そうでなければ血縁上の父親……彼に認知してもらうのが筋ではないでしょうか?」

 と筆者はアドバイスしました。

 真美子さんは彼と子の血のつながりを断ちたいわけではないので、ようやく前向きな気持ちになり、認知の手続を母親に任せたのです。

 彼はLINEをブロックする前、真美子さんへ「誕生を楽しみにしてるよ」というメッセージを送っていました。そこで母親が彼に対し、このLINEの画面を添付した上で認知するよう頼んだのですが、万が一、彼が「本当に俺の子なのか」と言い出したら大変です。例えば、出産後に親子かどうかを確かめるために、彼と産まれてきた子をDNA鑑定するなど、追加の手続が必要になります。鑑定費用は5~15万円とかなり高額です。しかし、彼は胎児が自分の子だということを自主的に認めたので心配は杞憂に終わりました。すんなり署名済の認知届を手に入れることができたのです。

養育費算定表を使うと毎月の養育費は9万円

 2つ目は子の養育費です。前述の認知手続によって親子関係が発生したのですが、嫡出子であれ婚外子であれ、父親は子に対して扶養義務を負っています。それなのに彼は「払えたら払うって。養育費は義務じゃなくてボランティアだろ!」と言い放ったのですが、見当違いもいいところです。

 養育費を計算する方法は家庭裁判所が公表している養育費算定表を使うのが一般的です。養育費の権利者の年収を横軸、義務者の年収を縦軸という形のチャート図になっており、お互いの年収に照らすことで妥当な月額を知ることができます。彼は同棲中、「年収822万円も稼いでいるんだぞ!」と豪語していたので今さら年収を聞き出す必要はありませんでした。彼のマウンティング気質が裏目に出た格好です。

 一方、真美子さんは出産後、どうしても働くことができる時間が限られるようで、年収が200万円まで落ち込む模様。2人の年収を上記の算定表に当てはめると養育費は毎月9万円となりました。彼は「あるとき払い」ではなく、まとまった金額を毎月、支払わなければなりませんが、それでも猜疑心の強い彼は「本当に子どものために使うのか? お前の小遣いを払うわけじゃないんだぞ! ちゃんと線引きしろよな?」と言い、おかしな提案をしてきたのです。