“未来を見据えた”辞退

 '22年冬季北京五輪のプレシーズンを全試合欠場するとなると、前人未到の五輪3連覇にブレーキがかかるようにも思えるが、感染症に詳しいナビタスクリニック理事長の久住英二医師は、むしろ逆のことを指摘する。

「羽生さんは、いま大会に無理して出ることよりも、今後の選手生活を大切に思って欠場を判断されたのだと思います。コロナウイルスによる肺炎というのは、肺の容積が小さくなるという報告もあります。肺活量が落ちてしまうんです。アスリートとしては致命傷になりかねません。たとえ回復しても、再び元の肺活量、肺の機能を取り戻すことはそうとう難しいでしょう。未来を見据えれば、今回の辞退は大事を取って避ける“英断”とも言えます」

 羽生にはどうしても叶えたい、ブレない夢がある。世界初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)の完成だ。

完成させるために1シーズン休み、そのぶんを練習や休息にあてるのは、彼にとっていいことだと思います。今シーズンなのか来シーズンになるかはわかりませんが、きっと近いうちに披露してくれるでしょう」(折山さん)

 昨季までGPシリーズを10シーズン連続参加と、まさに突っ走ってきた。

「天下一品のトリプルアクセル、という土台がしっかりありますから、そこに1回転を加えることは、そこまで難しくはないだろう、というのが私の見解です。

 生きているうちに、ファンのみなさんと一緒に見てみたい。楽しみにしています」(佐野さん)

 コロナが過ぎ去ったとき、氷上の貴公子は華麗な舞を見せてくれるに違いない。