「なんとしてものし上がってやる」という感覚

村西 ここまで一方的に私がしゃべっちゃったけど、原田くんのほうで何か聞きたいことはある?

原田 監督はこれまで、いろいろな逆境を乗り越えてこられたと思うんですけど、やっぱり、エネルギーの源をお聞きしたかったんです。

村西 それは、なんとしても生きなきゃいけない、家族を守らなきゃいけない、という強い意志だね。何より、私は人生に後悔がないんです。前科7犯、借金50億、アメリカで懲役370年を食らって、何千何百万人のみなさまに女房とイタしているところをお見せしてきたけれど、後悔がない。

 後悔がないどころか、同じ人生をもう1度歩む自信がない! なぜならば、とてもラッキーだから。すべてがプラスになっているんですよ。原田くんもそうでしょ?

原田 たしかに、僕も同じ人生は歩めないと思っています。

村西 私は団塊の世代だから、競争上等、生命力にあふれているんです。進駐軍が日本に来たころ「ギブミーチョコレート」と叫んだのに、彼らが投げてきたのはみかんの皮だったけど、その皮を食べて生き延びてきた。

 それからは「なんとしてものし上がってやる」という感覚で、ずっと走りっぱなしですよ。私のエロティシズムとかエンターテイメントは、すべて後づけなんです。生きるのに必死だっただけで、自分自身に根性があるとか、パワフルだとかは考えたことがないですね。

原田 でも、村西監督のように誰でも乗り越えられるとは思えないんです。

村西 そうでもないですよ。世間から見れば「よくこの人生きてるな」と思うかもしれないけれど、それでも生きていける。なかには嘲笑ったり、バカにしている人もいるでしょう。笑われても、生きているだけでたいしたもんだ。それはやっぱり、女房子どもに2度とつらい思いはさせたくない、という思いに尽きるんです。

原田 はい。僕も同感です。

村西 だからこそ、野心家であり続けなきゃならない。外に目を向けて“誰も見たことがないような作品”を作らなきゃならないわけですよ。

 自分自身の内面だけをずーっと見続けていると限界がきて、うつになってしまう。でも、原田くんも私も、気持ちが外に向かっているから、そこにとんでもない出会いがあるんです。

 原田くんは、今までどんな女優さんと出会って関係を持ったの? 500人くらい?

原田 3ケタなんてめっそうもない!

村西 またウソばっかり!