2人ともアコースティックギターを持って歌う。とくに岩沢厚治は、YAMAHAのFGシリーズという1970年代フォークシンガー御用達のギターの愛好者。初期のレコーディングには、永遠の名器といわれるYAMAHA FG-180(赤ラベル)を使用している。

 基本的には、1970年代のフォークソングにはなかったような明るさが彼らの特徴であるのだが、1998年のアルバム『ゆずマン』に収められた「春三」の饒舌な歌詞は、かつての吉田拓郎を思い浮かばせてくれるような瞬間がある。

フォークソングのスピリットを感じさせるアーティスト

 2000年代に入ってからも、ストリートでのパフォーマンスは続いていった。かつては、演奏する場所がないため路上を選んだように思うが、昨今は1つのステップとして街角が選ばれているのではないだろうか。例えば、モーニング娘。のオーディションに落ちたからストリートで歌い始めた。そんなシンガーが出てきてもおかしくないのかもしれない。

 つまりストリートパフォーマンスは、1つの手段であり、方便であるのだ。andymoriの歌に「路上のフォークシンガー」というのがあるが、ストリートシンガーは、今ではただの光景になってしまったのかもしれない。これからはフォークソングの遺伝子を持った歌い手は、路上ではなく、もっとほかのところから出てくるような気がする。

「恋ダンス」ですっかり国民的なスターとなった星野源だが、その資質はフォークソングにあった。あったと過去形で書いてしまうことになるが、自身が参加していたグループSAKEROCKから距離を置き、ソロ活動を始めた頃は、自分の周りの出来事しか歌わない、生粋のシンガーソングライターであった。

 2010年に発表したアルバム『ばかのうた』は、そんな身近なものばかりの歌が詰まっている。デビューシングルの「くだらないの中に」は、その骨頂のような歌で、21世紀が生んだ最高のラヴソングの1つと言ってもいい。ただ星野源の場合は、すでにシンガーソングライター期は過ぎて次のフェーズを進んでいる。それが少し残念でならない。