脱・王道アイドルでブレイクする小泉

 そこで翌年以降「でも、それがきっかけで開き直っちゃった」として路線を変更。髪を短くカリアゲたり全身、黒塗りのアートっぽいビキニグラビアをやったり、迷惑をかける人を「甘えてんじゃねーよ、バーカ」と怒鳴りつけた話をするなど、王道アイドルのあえて逆を行くことでブレイクしていく。

 そこには、いわゆる元ヤンっぽい気質もプラスに働いたのだろう。また、反体制的なものを好むメディアや文化人にも面白がられ、ちやほやされた。

 そう、実はこの成功体験こそ彼女の原点なのだ。最近の政治発言も、その延長線上にある。元ヤン気質だから権力には反発したいし、そこを頭のよさそうな人からほめられればうれしい、という感覚が根っこにあるのだろう。

 驚くとすれば、そんな最近の彼女を支持する人もそれなりにいること。それはたぶん、アイドル時代、こんな発言をするところが好きだった層である。

「セブン-イレブンでおにぎりを買うときも、ビギなんかのカッコいい袋を持って行くことにしまーす」(フライデー)

 写真誌に撮られた際、コンビニの袋を持っていたことが情けなかったとして発した言葉だ。最近の政治発言も、コアなファンには「カッコいい袋」に見えているのではないか。

 彼女の場合、永瀬正敏と離婚せず、幸せな家庭を育めていれば、人生観も変わったかもしれない。が、ママタレにならなかった分、コアなファンにとっての永遠のアイドルでいられるともいえる。

 代表曲『なんてったってアイドル』で歌ったように、やっぱり「アイドルはやめられない」ものらしい。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。